2012年3月31日土曜日

2011年度の終わりに

普通は年末年始にいろいろと振り返るものなのかもしれないけれど、3月でそれまでの環境を去り、4月に新しい環境に入る日本社会では年度末、年度始のほうが振り返るに相応しいような気がする。

2011年度はぼくにとってもいろいろと節目のとしで、まず学部から博士課程まで10年(!)籍を置いたSFCから去ることになる。これまでも、特に博士課程に入ってからは仕事をしていたこともあって、それほどいたわけではないけれど、やはりいよいよ正式な学籍がなくなると「いよいよ、来たか」という気がする。もちろんまだ博士号を取りに来るとはいうものの、単位取得退学で学籍はないため、やはり「外のひと」だ。結局のところ、多くのSFCに籍をおいた人たち同様に、いつのまにかすっかり「嫌い嫌いも好きのうち」というSFCの魔法にかかっていたようだ。そんな「魔法の国」から離れるのはそれなりに寂しい。

もうひとつは2年間調査研究の専門職員として務めた中小機構。ここもすでに最終出勤日は終えたものの、3月末を持って退職する。中小機構は経産省傘下の独立行政法人で、中小企業向けの各種支援を行っている機関だが、もちろん中小企業政策と、その生態系を学んだことと、それからいわゆる普通の日本の雇用環境に月10日とはいえ、身をおき、満員電車に揺られながら通った経験は、必ずしも愉快な経験だったとはいえないものの、視野を広げるいい機会だった。政策や制度を研究するものとして、きっと別のかたちでも活かす機会があるような気がしている。

組織を離れることは、なによりそこに所属する多くの方々との距離が遠くなることを意味する。そのことがなによりも寂しい。SFC院のインターリアリティプロジェクトでとにかく面倒を見てくださった土屋先生、熊坂先生、井庭先生のチーム。専門や研究対象は重ならないものの、「新しさ」を追うこと、オモシロがれる人になること、同時にそういった道を歩むことの厳しさを教えてくださった先生方だ。現実的な研究者としての姿勢は3人のスタイルから学ばせてもらった。また新しい職場に行くにあたっても、多くの先生方との出会いのなかで具体的にかたちになった。一連のその出会いはまさに「ありそうもないこと」であった。どの先生方との出会いがなくても、結実しなかったと思う。今の機構の職員の方、それからぼくの採用に関わった方々には、ともかく寛容に接してくださった。社会性のない、一番若く、わがままで生意気なぼくを置いて、それなりに親切に接してくださった。

さすがに感傷に浸るのを禁じえないけれども、多くの方々から受けたあまりに大きな恩に対して、ぼくができる恩返しというのは今のところ見つかっていない。そんななかで
以前、少し密にお付き合いさせていただいていた、若い頃からいまもハワイに通い続ける、ある往年のプロサーファーの方に言われた言葉が残っている。「恩返しを考えるなんて、早過ぎる。まずは恩返しするに相応しい力をつけろ」と。やはり、これからが本領を問われるのだろう。いよいよ補助輪も外れて「さあ、お手並み拝見」というわけだ。まだどこにも到達していない。振り返らず、慢心せず、ひたすら前に進もうと思う。そんな2011年度の年度末。