2016年12月31日土曜日
国立大学の授業料と減免制度(全額、半額免除)について
今年は給付型奨学金が話題になっている。しかしそもそも大学の学費の実態はあまり知られていない。「高い」「安い」といったイメージが先行しがちである。私立大学にとっては経営の柱でもあるのでその金額はかなりばらつきがあるが、ここでは国立大学と公立大学の学費(授業料)と、その減免制度について紹介したい。
本論とは異なるので、ここでは細かい話は割愛するが、日本の国立大学の学費は省令で定められていて、国際的にみて相対的にかなり安価なものになっている。ポイントは日本の場合は、大学の授業料がコストベースではなく省令によって一律に定められていることと、奨学金ではなく減免措置を中心としていることだ。大学の裁量は近年の改正で若干増えたが、国立大学は総じて省令に沿った授業料を設定している。
国立大学等の授業料その他の費用に関する省令
要は設計思想の違いである。英米圏の大学の学費はコストベースで設計され、基準がかなり高額になっている一方で、「優秀」だが家計が見合わない場合などに必要に応じて十分な奨学金を用意するものであり、日本の場合は標準の授業料をかなり低く設定し、さらに家計に応じて減免するというものである。どちらにも一長一短があるものが、強いていえば日本の制度設計はわかりにくいうえに、十分周知されていないことが課題とはいえる。
それでは、2016年現在、国立大学の授業料はどのようになっているのだろうか。国立大学、そして国立大学に准じて少なくない公立大学の学費(授業料)の主流は約54万円である。これは原則として学部を問わないものである。あくまで授業料だけなら、仮に時給1000円のアルバイトを一日3時間、月15日程度で、だいたいこの額を賄える計算になる(月4万5千円×12ヶ月=年54万円)。
河合塾が国公立大学の学費や受験料を一覧していた。かなりわかりやすいので紹介する。
2016年度 国公立大学 受験料・初年度学費一覧
さらに、先ほどの省令は、各国立大学に授業料等の減免措置を設けることを求めている。
(経済的負担の軽減のための措置)
第十一条 国立大学法人は、経済的理由によって納付が困難であると認められる者その他のやむを得ない事情があると認められる者に対し、授業料、入学料又は寄宿料の全部若しくは一部の免除又は徴収の猶予その他の経済的負担の軽減を図るために必要な措置を講ずるものとする。
これを受けて、各国立大学は授業料等の全額免除、半額免除の制度を用意している。「事前に対象になるかわからない」という声があるかもしれないが、基準も公開されいているので、本人、家族が対象になりうるか、事前に検討してみることもできる。世帯の人数、課程に応じて、金額が増加するようにかなり丁寧に設計されており、半額免除制度の対象になる人の範囲はかなり広いと考えられる。
具体的に、これらを具体化したものもある。参考までに東京工業大学の例を挙げておく。
他の国立大学にも概ね類似の制度が用意されている。
給付型奨学金の議論の最中、さまざまな「風評」が飛び交った。世論形成のため致しかたなかった側面は否定できないにせよ、事実ではない事項も少なくなかった。そのなかには受験生の不安を煽ったりするようなものも少なくなかった。
文科省は今年の3月、以下のような文章を公開しているので、改めて一読しておいても良いだろう。
国立大学の授業料について
戦前は、とくに旧帝国大学にはエリート養成の場としての性質もあったが、近年は必ずしもそれだけではない。とくに地域における高等教育の機会を提供する実質的かつ重要な場としての機能も国立大学は有している。確かにセンター試験と二次試験の双方があり、対策は大変だが、私立大学と比べてやはり相対的にかなり安価に学ぶことができるともいえる。
日本式の複雑な制度は理解が難しく、周知の仕方も十分とは思えないが、ぜひ積極的に活用してほしいと思う。
※追記(2016年12月31日)
ここで書いているのは、国立大学中心であることに留意したい。「私立も含めた高等教育」に対する日本の公的支出が乏しいことは論をまたない。また現状で満足すべきということも特段書いていない。その一方でかなり複雑ながら、それなりに使える制度があることも事実で、それを周知することに寄与したいというのがこのエントリの目的だ。
the last #surfing at 2016. See you next year on the #beach .
Nishida, Ryosukeさん(@ryosukenishida)が投稿した写真 -
2016年12月28日水曜日
電通に関するインタビュー
『月刊日本』の2017年1月号の、「影の支配者・電通」(!)特集に、政治とメディアに関する長めのインタビューを入れました。概ね「市場の論理への(過剰な)最適化であって、陰謀ではない」「経路依存的な寡占で、対抗できる野党と、読み解くジャーナリズムの不在」を問題視しているのですが、特集の組み方もちょっと聞いてたのと違うのと、他に登壇している人もさもありなんという人たちばかりでちょっと脱力気味なので、もうここの依頼を受けることはないと思います…。
【イベントレポート】西田亮介 第6回 読書会【参加者インタビュー!】
【イベントレポート】西田亮介 第6回 読書会【参加者インタビュー!】
http://magazine.synapse.am/series/event-0510-nishidaryousuke-4
今月の読書会終了後、参加者の皆さんのインタビューを収録したものがコンテンツになりました。ぼくのサロンがどのように活用されているかを垣間見るというのも面白いですし、参考にしていただければと思います。
西田亮介の新書、文庫、雑誌で始めるリベラルアーツゼミ@Synapse
http://synapse.am/contents/monthly/0510
2016年12月27日火曜日
2016年12月26日月曜日
日本版オープンデータ(官民データ活用推進基本法)から抜け落ちる政治と政治資金の情報公開
少々時間が経ったが、今月冒頭、官民データ活用推進基本法が成立した。
「官民データ活用推進基本法」が成立、AIやIoTも法律で初めて定義 | 新・公民連携最前線 PPPまちづくり
さまざまな社会問題の解決にあたって、「官民データ」を効率的に活用することを目指した、いわゆる日本版オープンデータ、オープンガバメントのための基本法といえる。
(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/hourei/pdf/detakatsuyo_gaiyou.pdfより引用。JPEGにファイル形式を変換)
オープンデータ、オープンガバメントとは何か。オバマ大統領は就任直後、ITとその機能特性を積極活用した施策を実施すべく、いくつかの覚書、指令を公開した。そこでは、オープンガバメントを次のように定義している。
- Government should be transparent. (政府の透明性の向上)
- Government should be participatory.(政府(政治)への参加促進)
- Government should be collaborative.(政府との協働の促進)
ある意味、連邦政府(と権力)に対する懐疑が根底にあるアメリカらしい、そしてオバマ大統領らしい宣言だった。
当時、これを受けて、日本でもオープンガバメント、オープンデータへの注目が集まった。
オープンガバメントとは、インターネットを活用し政府を国民に開かれたものにしていく取り組みです。ソーシャルネットワークなどのWeb2.0のサービスを利用することからGov2.0と呼ばれることもあります。電子政府の推進では、以前からサービス提供者視点ではなく利用者視点でのサービス提供(Citizens-centric)が求められてきましたが、更に進めて、市民参加型のサービス実現(Citizens-Driven)が求められています。新しい公共などの取り組みも進められていますし、新しい民主主義の方法という人もいます。
(「オープンガバメントラボ」(http://openlabs.go.jp/whatis/)より引用)
しかしながら、冒頭の概要も改めて見てほしいが、官民データ活用推進基本法はビジネスでの利活用に特化した内容になっていて、透明性の改善、参加の促進、協働の促進といった観点が抜け落ちている。なかでも、「官民データ」という表現にもよく現れているが、日本の国政、地方政治で長く問題になっている政治と政治資金にはまったく触れられていないものになっている。
ここには幾つかの問題が残されている。オープンガバメント、オープンデータを評価するランキングには複数あり、日本も高く評価されているものと、評価が低いものに分かれている。詳細は、近くネットでも公開されるはずの計画行政学会の学会誌『計画行政』のオープンデータ特集に寄稿した拙稿「日本のオープンデータと『新しい公共』――現状とその課題、協働促進のプラットフォームに向けて」で論じたが、要は日本が高く評価されているランキングでは行政情報の公開は現状でも高く評価されている。そのため、今さら行政情報の公開に主軸を置いた法律には疑義が残る。これは行政機関情報公開法等との兼ね合いでも同様である。逆に日本が評価されていないランキングでは前述の政治の透明化や参加に関する指標が低く評価されている。むろんランキングありきではないが、従来の日本型オープンデータ、オープンガバメントの課題は改善されないままだ。
そもそもオープンデータやオープンガバメントが本当にイノベーティブな経済効果を生むのかという問題もある。アメリカでこのオープンデータやオープンガバメントをIT企業が強くロビイングしていたことからもわかるように、IT業界への公共投資を促進するものといえる。官民データ活用推進基本法も次のような施策を要請している。前述の「概要」からの引用では、以下のようなものを列挙することができる。
- 行政手続に係るオンライン利用の原則化・民間事業者等の手続に係るオンライン利用の促進(10条)
- 国・地方公共団体・事業者による自ら保有する官民データの活用の推進等、関連する制度の見直し(コンテンツ流通円滑化を含む)(11条)
- 官民データの円滑な流通を促進するため、データ流通における個人の関与の仕組みの構築等(12条)
- 地理的な制約、年齢その他の要因に基づく情報通信技術の利用機会又は活用に係る格差の是正(14条)
- 情報システムに係る規格の整備、互換性の確保、業務の見直し、官民の情報システムの連携を図るための基盤の整備(サービスプラットフォーム)(15条)
- 国及び地方公共団体の施策の整合性の確保(19条)
これらを見るだけでも、計画策定のためのコンサルティング、基盤整備のためのシステム部門等々、すぐさま大小のIT企業への投資促進が必要になることが推測できる。とはいえ、それらは必ずしも、当初いわれていたようなイノベーティブな部門というわけでもないだろう。実際、オープンデータの実証実験が行われていて、それらはたとえば総務省のサイトから概要を読むことができる。そこではアプリを作成したといった「成果」が列挙されているが、必ずしも地域経済への効果が明示的に示されているとはいえない(総務省「オープンデータ実証実験」(http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ictriyou/opendata/opendata03.html#p3-2))。そもそも、市場化困難な部門を引き受けている行政が蓄積した情報を公開したとして、それだけでイノベーティブな新ビジネス創造が容易だとは思えない。
OECDなどは、オープンデータ、オープンガバメントを汚職を払拭するための施策としても位置づけているが、こうした議論が日本で鑑みられることは少ない。新聞社の政治部関係者や市民団体などが手書きで書かれた政治資金規正法上の公開情報をアナログで収集して突き合わせたりしている有様だ。こういった政治情報と政治資金情報が置かれたまったく非合理的な状況の改善こそが、日本のオープンデータ、オープンガバメントで求められていた/るのではないか。それが信頼性や透明性の改善につながるだろうし、国際的なランキングの改善にも貢献するはずだ。政治資金規正法の改正等が必要だろうが、注目すべき事項としては総務省は「反復継続的に開示がなされた情報等の提供について」という決定を行っている。これらは政治情報についても向けられるものではないかと思われるが、どうか。日本のオープンデータ、オープンガバメントは、改めて政治の透明化と信頼性の改善を考えるべき時期を迎えているように思われる。
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2016年12月24日土曜日
2016年12月19日『公明新聞』にギャビン・ニューサム『未来政府』の書評を書きました。
まさに上記Tweetの通りですが、『公明新聞』の書評欄に、ギャビン・ニューサムの『未来政府』の書評を書きました。電子政府論でもありますが、その場合、「アメリカもこうだから…」と読んでもしかたなくて、そもそも自由度の高いアメリカの地方自治制度とIT的なものは相性が良いので、それらをあわせていかにして日本モデルをつくるかが大事ですね、というようなことを最後に少しだけ書きました。そういえば、12月19日付け『公明新聞』に、ギャビン・ニューサムの『未来政府』の書評を書きました。シリアルアントレプレナーであり、行政府の首長を連続して経験するユニークなキャリアを持つ著者の統治機構論で面白かったですよ。— 西田亮介/Ryosuke Nishida (@Ryosuke_Nishida) December 24, 2016
⇒https://t.co/7bS57R3XFQ pic.twitter.com/mJuV2Kes0S
2016年12月22日木曜日
「自前メディアの活用、市民との協働……高度化した政治の情報発信の陥穽とは」『Journalism』2016年12月号
朝日新聞社の『Journalism』12月号に寄稿した、主要5政党の政党の情報発信について政党広報と関係者らに取材した知見に基づく論文がWebronzaでも公開されました。『メディアと自民党』の続編に当たる内容ともいえます。
自前メディアの活用、市民との協働…… - 西田亮介(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)|WEBRONZA - 朝日新聞社
http://webronza.asahi.com/journalism/articles/2016121200012.html
西田亮介,2016,「自前メディアの活用、市民との協働……高度化した政治の情報発信の陥穽とは」『Journalism』2016年12月号28-34.
下記が掲載号です。
自前メディアの活用、市民との協働…… - 西田亮介(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)|WEBRONZA - 朝日新聞社
http://webronza.asahi.com/journalism/articles/2016121200012.html
西田亮介,2016,「自前メディアの活用、市民との協働……高度化した政治の情報発信の陥穽とは」『Journalism』2016年12月号28-34.
下記が掲載号です。
2016年12月20日火曜日
「最近の公共政策におけるnudgeの導入とそのガバナンスに関する考察」@2016年社会情報学会(2016年9月11日@札幌学院大学).
201609社会情報学会 from 亮介 西田
すっかり放置したまま忘れていたのですが、9月の社会情報学会での学会報告のスライドです。
西田亮介,2016,「最近の公共政策におけるnudgeの導入とそのガバナンスに関する考察」@2016年社会情報学会(2016年9月11日@札幌学院大学).
2016年12月19日月曜日
「『post-truth politics』のITと選挙 ――政治の情報発信とジャーナリズムを中心に」@Innovation Nippon 2015(2016年12月15日)
20161215 innnovetionnippon from 亮介 西田
Innovation Nippon2016での「米国大統領選挙に見る『ITと選挙』のイノベーション」セッションの基調講演用のスライドです。post-truth politicsの課題等について言及しています。
http://www.glocom.ac.jp/events/2022
西田亮介,2016,「『post-truth politics』のITと選挙 ――政治の情報発信とジャーナリズムを中心に」@Innovation Nippon 2016(2016年12月15日).
Innovation Nippon2016での「米国大統領選挙に見る『ITと選挙』のイノベーション」セッションの基調講演用のスライドです。post-truth politicsの課題等について言及しています。
http://www.glocom.ac.jp/events/2022
西田亮介,2016,「『post-truth politics』のITと選挙 ――政治の情報発信とジャーナリズムを中心に」@Innovation Nippon 2016(2016年12月15日).
2016年12月14日水曜日
2016年12月14日(水)フジテレビ系列「ユアタイム」にコメンテータとして出演しました。
(http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00344489.html より引用) |
2016年12月14日(水)フジテレビ系列「ユアタイム」にコメンテータとして出演しました。まさにリアルタイムでオスプレイ事故が飛び込んできて、尺が減り、置物的側面が強かったですが、思いがけず、市川紗椰さんらとクルマトークができたのも楽しかったです。しばらくの間は、下記公式ページで密着して作られたショートクリップが見られるようですので、ご笑覧ください。
http://www.fnn-news.com/news/headlines/articles/CONN00344489.html
2016年12月12日月曜日
NewsPicks佐々木紀彦編集長講演会「日本3.0」@東京工業大学 2017年1月16日(月)18時〜(参加無料)
NewsPicks編集長の佐々木紀彦さんの講演会「日本3.0」を2017年1月16日(月)18時〜東京工業大学大岡山キャンパスにて開催します。学内外の皆さんの参加が可能で、参加無料です。佐々木さんは『5年後、メディアは稼げるか』『米国製エリートは本当にすごいのか?』等の著者でもあり、スタンフォード大学への留学経験、そして東洋経済新報社という老舗メディアの編集長から、NewsPicksというスタートアップメディアの編集長へというキャリアチェンジ等々、大変話題が刺激的かつ豊富な方ですので、ぜひご参加ください。前職でも複数回大規模なゲスト講演をお願いしたことがありますが、東京工業大学の学生や教職員の皆さんにとっても有益なお話をいただけることと思います。
(パンフレットのデザインは、同僚の伊藤亜紗先生)
2016年12月11日日曜日
『ゲンロンβ9』
『ゲンロン』、そして『ゲンロンβ』と続いてきた連載の最終回が収録されています。最終回は「POST-TRUTH」とメディア・リテラシーの限界について論じています。この言葉は、2016年を代表する英単語として、イギリスのオックスフォード大学出版局が選んだものです。「BREXIT」、トランプ、日本に引き寄せれば、衆参両院で改憲派≒脱原発派が3分の2を獲得することになり、しかし脱原発派市長が関係自治体で選出されたりと、民意と政治、社会の関係が取り沙汰された一年だったということです。ぼくの仕事でいえば、ひとまず発信者(『メディアと自民党』『マーケティング化する民主主義』)と、ジャーナリズムの現代化(一連の『Journalism』誌掲載論文等)となりますが、この問題の難しさを従来のメディアリテラシー論の限界と絡めて論じたものが連載最終回といえそうです。
2016年12月6日火曜日
2016年12月5日月曜日
最近、
主に日常の気付きの更新にLINEBLOGを使う試行錯誤をしています。スマホからの入力が必須なので、あまり長文を書けない、しかしソーシャルメディアより長文でありつつソーシャルメディア的なフォロー、フォローバック機能があるのでそんな用法が定着していますが、また機を見て使い方を変えたり、更新しなくなったりすると思いますが、チェックしてみてください。
http://lineblog.me/ryosukenishida
http://lineblog.me/ryosukenishida
2016年11月28日月曜日
国立大学の現状についての基本的な4つの誤解について
なぜ日本の大学政策は国内外からの指摘にもかかわらず運営費交付金削減と競争的資金政策に拘り続けるのか(西田亮介)- Y!ニュース
今月前半、主に国立大学に関する上記の記事を書いた。筆者自身が国立大学に勤務し、日々大学で教育研究に携わっているなかで感じる違和についてまとめた記事だが、それなりに多く読んでいただいたようで、ポジティブなもの、ネガティブなものをふくめていろいろな反応があった。そのなかで幾つか典型的な誤解のパターンのようなものがあったので、少々時間がたったが、この問題を考えるにあたって基本的な補助線にもなりそうなのでさしあたり4点まとめておくことにした。
1.若手のポストがないというが、競争的資金で雇用すればよいので恒常的予算である運営費交付金の増額は必要ない。
⇒
競争的資金は科研費を筆頭に、現状、数年から10年程度の時限付きの予算が中心で、その予算を通じて直接、各部局の基幹教育研究のための教員は雇用できない。
2.若手のポストがないなら、年長世代の教員を解雇できるようにすればよい。
⇒
「優秀な人材が逃げる…」地方国立大、人件費削減に悲鳴:朝日新聞デジタル
最近、朝日新聞の教育関係の取材班が国立大学の問題に関心を持っているようで、立て続けに関連の記事を出している。世論形成やこの問題の周知にとって有難いことである。奇しくもその記事のなかで、山本行革大臣「山本幸三・行政改革相『学長は教授をクビにできるのか』」という主旨の発言をしたことが書かれているが、確かにネットでもしばしばこのような発言を見かけた。しかし少々日本の労働法規を思い出してほしいのだが、日本では整理解雇は原則として最後の手段となっており、民間企業でも実質的にはなかなか踏み切ることはできない(というよりも、かなり困難である)。大学でも同様で、若年世代の雇用を確保する必要はあるが、だからといって、年長世代を解雇したり、新規に流動的な契約に強制的に変更することはできない。それどころか、意識されることも少ないが、従来の給与体系からの変更を要求することさえかなり難しい。このあたりの認識が混乱していることもあって、現状、ポストが不足する若年世代を中心に、任期付き、年俸制を前提とした流動性の高い環境に置かれることになってある意味では本末転倒な状況が生じている。ちなみに任期付きでも特任等の職位でなければ、教授会や全学関係、入試関係の管理業務も担当する。
3.恒常的予算が減少しているなら、新しい収入源を見つけるべき
⇒
なかでももっとも簡単に思えるのが学費の値上げだろう。しかし大半の国立大学はそれをしていない。なぜか。国立大学は、その性質上、いわゆる学費(授業料)、入学料、検定料が制度で定められている。授業料についていえば、約54万円と規模やコスト、大学の学部等にかかわらず一律に定められており、「特別の事情があるときには」1.2倍まで値上げできるとされているが、ほとんどの大学で標準額のままになっている。この点は私立大学と国立大学との違いでもある。また定員や教員数についても、文科省に届け出た数字に拘束されているので、コストカットには限界がある。そもそも非営利組織であることからして、その性質上、社会との利益相反や特定企業等への利益供与にならないようにするといった点も考慮しなければならないなど、一般の企業よりも安定的な収入の拡大のための条件は多く、実際かなり難しいといえる。寄付やクラウドファンディングも、一時的なプロジェクトや研究費の調達には一定程度貢献するが、人件費や建物の老朽化対策等に適しているとは言い難い。
4.民間同様のマネジメントや評価手法を導入すべき
⇒
これも上記の朝日新聞の記事のなかの、山本行革大臣の「企業経営的な運営ができていない」という主旨の発言に象徴されているが、実態は国立大学法人化以後、かなり企業経営的な手法が導入されている。筆者もそうだが、近年採用された国立大学の准教授以下の職位の教員は年俸制と任期付きがかなり多くなっているはずだ。だが民間企業でも外資系などを除くと、年俸制と任期付きが最初からセットになった雇用はさほど主流になっていないはずだ。その意味では民間企業よりも踏み込んだものになっているともいえる。年俸制ということは、毎年かなりの数にのぼる評価項目を含んだ自己評価と部局長評価を踏まえた査定があり、給与の見直しが行われる。こちらも、一時期民間企業でも流行ったが、最近では効果が曖昧だということで見直しも進んだとされている。またすでに各所でいわれているように、財政的に逼迫しており、年俸制のなかに業績給の要素が含まれるものの、大幅な給与増や継続的な改善も望めず、適切なインセンティブ設計になっているとは思えない。給料とは別に研究費に入るが、国立大学全般の財政的制約のなかで、競争的資金を獲得したときの研究費のインセンティブが減額される傾向にさえある。
最近では河野太郎内閣府特命担当大臣が、競争的資金の実態や国立大学の問題に関心を持ち、研究者にブログで課題の集約を呼びかけたりするといったこともあった。
またすこし研究者の皆様へ
もうちよっと研究者の皆様へ
(ほかにも一連のエントリ有り)
一連の朝日新聞の記事といい、少しずつ社会の関心が向きつつある雰囲気は感じる一方で、たしかに大学や当事者からの情報発信が十分ではないのも事実で(そもそもここで書いたような誤解がまかり通っていることにも、やはりこれまで十分な周知を行ってこなかった影響も少なくないように感じる)、それらを払拭するためにも当事者のひとりとしてこの問題を考えるための基本的な補助線を提供したいと考え、このエントリを書いたが、この問題の理解の一助になれば幸いである。
大学改革に関して、意外と規制による制約が多く存在し、大学内部での試行錯誤や創意工夫の余地が制約されていることを知ってほしいという願いがある。とはいえ、恐らく、今後大規模な運営費交付金の増額等は望めず、だとすればまさに本質的な改革のために大幅な規制緩和が必要ではないか。現状は予算も増やせないが、工夫のための権限も各大学には渡せないという状況で、国の政策に現場は右往左往せざるを得ない状況になっている。ある意味、三位一体改革以前の(しかし今も続く)地方分権改革の「失敗」と似ている。
2016年11月27日日曜日
今月2度目の『モーニングクロス』は…
今後ゲストは…月)古田大輔、金慶珠、渋谷ザニー 火)田中康夫、レイチェル・チャン、若新雄純 水)西田亮介、河合薫、田上嘉一 木)磯山友幸、北条かや、シモダテツヤ 金)田勢康弘、柏木理佳、倉持麟太郎 5月)駒崎弘樹、秦万里子、前田裕二 6火)津田大介、フィフィ、森田豊 #クロス— モーニングCROSS (@morning_cross) November 24, 2016
11月30日(水) 朝。Tokyo MXか、アプリ「エムキャス」、ウェブにてご視聴ください。
https://mcas.jp/
2016年11月23日水曜日
The Features of "Workless Society" in Japan
先週の清華大学で用いたスライドです。提携校のため研究交流、教員交流も目的とされていたので、自己紹介などが通常より多めにとってあります。
R.Nishida, 2016, The Features of “Workless Society” in Japan 19, Nov. 2016@Tsinghua University.
2016年11月22日火曜日
2017年度4月入学研究室研究生の募集について
2017年度4月入学の研究室研究生の募集について、大学のホームページで告知が始まりました。
http://www.titech.ac.jp/graduate_school/international/research_students/data/syutugan/1_gansyo_j_a.pdf
ぼくの研究室での指導を希望する人は、下記の研究室案内とあわせてよく読んで、連絡してください。
https://sites.google.com/site/ryosukenishidalaboratory/
http://www.titech.ac.jp/graduate_school/international/research_students/data/syutugan/1_gansyo_j_a.pdf
ぼくの研究室での指導を希望する人は、下記の研究室案内とあわせてよく読んで、連絡してください。
https://sites.google.com/site/ryosukenishidalaboratory/
Innovation Nippon2016シンポジウム
Innnovation Nipppon主催のイベントに登壇、基調講演することになりました。今秋ずっと取材していた、最新の日本の政党の情報発信手法と戦略についてご紹介しようと思っています。よろしくお願いします。
≪≪≪≪≪≪ Innovation Nippon2016シンポジウムのご案内 ≫≫≫≫≫≫
◆タイトル:「情報の自由と活用を考える―政治・消費・対話のパラダイムシフト」
◆日時:2016年12月15日(木)13:10‐18:30
◆会場:東京ミッドタウン カンファレンスRoom7(ミッドタウンタワー4F)
◆主催:Innovation Nippon
http://www.innovation-nippon.jp/
◆後援
グーグル株式会社
総務省(※申請中)
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)
◆概要
テクノロジーの進歩によって人々は大量の情報を自由に共有・発信出来るようにな
り、それらを活用することでさらなる社会の発展がある――。21世紀はそのような情
報化社会になるといわれ、実際に次々と生産・消費活動、ビジネスモデル、コミュニ
ケーション方法等が創造的に破壊され、社会は大きな変革を迎えようとしています。
しかしその一方で、情報の活用が進んでいない地域・分野が多いことや、情報の自由
と責任のバランス等、社会が検討すべき課題は多くあります。
Innovation Nippon 2016では、情報の自由と活用促進について改めて考えるため、政
治・経済・コミュニケーション等の幅広い視点から実践的研究を行ってきました。シ
ンポジウムでは、「地方創生とIT活用」「情報シェアの経済的インパクトと政策」
「ITと選挙」についての新たな知見を公表するとともに、ITによってもたらされた情
報の自由と活用、そして情報社会の未来について議論します。
◆プログラム
・プロローグ(13:10-13:20)
・Session 1「地方創生をITの力で促進する」(13:20-14:50)
―基調講演①:今川拓郎(総務省情報流通行政局情報流通振興課長)
―基調講演②:田村祥宏(株式会社イグジットフィルム)
―パネルディスカッション:
今川拓郎(総務省情報流通行政局情報流通振興課長)
田村祥宏(株式会社イグジットフィルム)
河野秀和(シタテル株式会社代表取締役)
【モデレータ】庄司昌彦(国際大学GLOCOM主任研究員・准教授)
・Session 2「人々の情報シェアがもたらす経済的インパクトと政策的検討」
(15:05-16:35)
―基調講演:山口真一(国際大学GLOCOM研究員・講師)
―パネルディスカッション:
木村忠正(立教大学社会学部教授)
津田大介(ジャーナリスト)
福井健策(弁護士(日本・ニューヨーク州))
山口真一(国際大学GLOCOM研究員・講師)
【モデレータ】高木聡一郎(国際大学GLOCOM主幹研究員・准教授)
・Session 3「ITがもたらす選挙のイノベーション」(16:50-18:20)
―基調講演①:西田亮介(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)
―基調講演②:庄司昌彦(国際大学GLOCOM主任研究員・准教授)
―パネルディスカッション:
清原聖子(明治大学情報コミュニケーション学部准教授)
庄司昌彦(国際大学GLOCOM主任研究員・准教授)
西田亮介(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)
渡瀬裕哉(早稲田大学招聘研究員)
【モデレータ】関口和一(日本経済新聞社編集委員)
・総括(18:20-18:30)
◆参加のお申込み/ Webイベントページ
下記URLにアクセスしお申込みフォームよりご登録ください。
Sessionごとのお申込みが可能です。ご参加希望のSessionを選択してください(複数
可)
http://www.glocom.ac.jp/events/2022
*本シンポジウムは、無料でご参加いただけます。
*アクセス元の環境によっては、上記URLの申込みフォームが表示されない場合がご
ざいます。その場合はお手数ですが、電子メールにてお問い合わせください。
*各Sessionの定員(各回120名)に達しましたら、お申込み受付を終了いたします。
お早めのお申し込みをお待ちしております。
≪≪≪≪≪≪ Innovation Nippon2016シンポジウムのご案内 ≫≫≫≫≫≫
◆タイトル:「情報の自由と活用を考える―政治・消費・対話のパラダイムシフト」
◆日時:2016年12月15日(木)13:10‐18:30
◆会場:東京ミッドタウン カンファレンスRoom7(ミッドタウンタワー4F)
◆主催:Innovation Nippon
http://www.innovation-nippon.jp/
◆後援
グーグル株式会社
総務省(※申請中)
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)
◆概要
テクノロジーの進歩によって人々は大量の情報を自由に共有・発信出来るようにな
り、それらを活用することでさらなる社会の発展がある――。21世紀はそのような情
報化社会になるといわれ、実際に次々と生産・消費活動、ビジネスモデル、コミュニ
ケーション方法等が創造的に破壊され、社会は大きな変革を迎えようとしています。
しかしその一方で、情報の活用が進んでいない地域・分野が多いことや、情報の自由
と責任のバランス等、社会が検討すべき課題は多くあります。
Innovation Nippon 2016では、情報の自由と活用促進について改めて考えるため、政
治・経済・コミュニケーション等の幅広い視点から実践的研究を行ってきました。シ
ンポジウムでは、「地方創生とIT活用」「情報シェアの経済的インパクトと政策」
「ITと選挙」についての新たな知見を公表するとともに、ITによってもたらされた情
報の自由と活用、そして情報社会の未来について議論します。
◆プログラム
・プロローグ(13:10-13:20)
・Session 1「地方創生をITの力で促進する」(13:20-14:50)
―基調講演①:今川拓郎(総務省情報流通行政局情報流通振興課長)
―基調講演②:田村祥宏(株式会社イグジットフィルム)
―パネルディスカッション:
今川拓郎(総務省情報流通行政局情報流通振興課長)
田村祥宏(株式会社イグジットフィルム)
河野秀和(シタテル株式会社代表取締役)
【モデレータ】庄司昌彦(国際大学GLOCOM主任研究員・准教授)
・Session 2「人々の情報シェアがもたらす経済的インパクトと政策的検討」
(15:05-16:35)
―基調講演:山口真一(国際大学GLOCOM研究員・講師)
―パネルディスカッション:
木村忠正(立教大学社会学部教授)
津田大介(ジャーナリスト)
福井健策(弁護士(日本・ニューヨーク州))
山口真一(国際大学GLOCOM研究員・講師)
【モデレータ】高木聡一郎(国際大学GLOCOM主幹研究員・准教授)
・Session 3「ITがもたらす選挙のイノベーション」(16:50-18:20)
―基調講演①:西田亮介(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)
―基調講演②:庄司昌彦(国際大学GLOCOM主任研究員・准教授)
―パネルディスカッション:
清原聖子(明治大学情報コミュニケーション学部准教授)
庄司昌彦(国際大学GLOCOM主任研究員・准教授)
西田亮介(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)
渡瀬裕哉(早稲田大学招聘研究員)
【モデレータ】関口和一(日本経済新聞社編集委員)
・総括(18:20-18:30)
◆参加のお申込み/ Webイベントページ
下記URLにアクセスしお申込みフォームよりご登録ください。
Sessionごとのお申込みが可能です。ご参加希望のSessionを選択してください(複数
可)
http://www.glocom.ac.jp/events/2022
*本シンポジウムは、無料でご参加いただけます。
*アクセス元の環境によっては、上記URLの申込みフォームが表示されない場合がご
ざいます。その場合はお手数ですが、電子メールにてお問い合わせください。
*各Sessionの定員(各回120名)に達しましたら、お申込み受付を終了いたします。
お早めのお申し込みをお待ちしております。
2016年11月18日金曜日
2016年11月17日木曜日
『ザ・議論! 「リベラルVS保守」究極対決』
版元の出版社さんからいただきました。著者との面識もなく「なぜ?」と思いながらページをめくっていたら、終わりのほうで法哲学者の井上達夫先生に少し長めに言及いただいていたので、それが献本いただいた理由のような気がしてきました。
2016年11月16日水曜日
「西田亮介の新書、文庫、雑誌で始めるリベラルアーツゼミ」リアル読書会レポート
Synapseのオウンドメディアでぼくのオンラインサロンが紹介されています。Synapseのなかの人でぼくのサロンに参加している田尻さんの執筆です。かなり詳細かつ的確に雰囲気を描写してくれていますので、ぜひ一読してみてください。「西田亮介の新書、文庫、雑誌で始めるリベラルアーツゼミ」リアル読書会レポート⁰https://t.co/ha563oYhAN— SYNAPSE オンラインマガジン (@magazinesynapse) November 16, 2016
2016年11月15日火曜日
LINE BLOG
これまで著名人のみに限定してきたLINE BLOGがいよいよ一般ユーザーにもアカウント開設を認めたということで、早速作ってみました。
http://lineblog.me/ryosukenishida/
更新はスマホのみで可能と、PC世代にとっては些か厳しい仕様となっておりますが、下記のエントリでけんすうさんが推論しているような戦略にはかなり首肯できるうえに、たしかに国内最大ユーザーを抱えるLINEが自己完結するエコシステムを形成するのであれば、そこへの対応の遅れは、日本語圏内での情報発信という意味では致命的なものになりかねません…。
LINE BLOGの設計が秀逸すぎる件について考察 - けんすう
http://lineblog.me/kensuu/archives/00144.html
正直、過去にnoteのアカウントを開設したものの、使いみちがイマイチわからなかったり、という経験を抱えているのですが、今回は新興サービスというよりは最大手の構想ということですから、ぼーっと眺めているだけではすまないような気がして、とりあえずアカウントを開設してみました。これを機に、もっとスマホシフトできるよう身体を対応させていきたいです…(正直しんどい
http://lineblog.me/ryosukenishida/
更新はスマホのみで可能と、PC世代にとっては些か厳しい仕様となっておりますが、下記のエントリでけんすうさんが推論しているような戦略にはかなり首肯できるうえに、たしかに国内最大ユーザーを抱えるLINEが自己完結するエコシステムを形成するのであれば、そこへの対応の遅れは、日本語圏内での情報発信という意味では致命的なものになりかねません…。
LINE BLOGの設計が秀逸すぎる件について考察 - けんすう
http://lineblog.me/kensuu/archives/00144.html
正直、過去にnoteのアカウントを開設したものの、使いみちがイマイチわからなかったり、という経験を抱えているのですが、今回は新興サービスというよりは最大手の構想ということですから、ぼーっと眺めているだけではすまないような気がして、とりあえずアカウントを開設してみました。これを機に、もっとスマホシフトできるよう身体を対応させていきたいです…(正直しんどい
2016年11月13日日曜日
11月10日、11日@TOKYO MX『モーニングクロス』
11月10日、11日と、アメリカ大統領選挙のトランプ勝利を受けて、VTR出演しました。9日の投票日当日午後に収録したものです。ぼくはもともとヒラリー勝利と思っていたので端的にハズれですが、現状踏襲の楽観シナリオと、選挙戦中のトランプ発言を踏襲する予測不可能な悲観的シナリオがあり、前者の仮説からのコメントでした。後者の場合は、端的にカオスで悲劇的です。
11/11(金)「ニュースHORIC」は、アメリカ大統領選挙でトランプ氏勝利で今後の日米関係はどうなっていくのか、グイグイ大胆予測の湯浅弁護士や社会学者の西田亮介さんなど様々な専門家の目線で解説します。 #クロス— モーニングCROSS (@morning_cross) 2016年11月10日
— ぶらさんぽ (@moyasora2016) November 10, 2016
2016年11月9日水曜日
「日本の精神性が世界をリードしていかないと地球が終わる」 安倍昭恵氏インタビュー
安倍昭恵さんとの「対談」と、その影響力、政治性について(西田亮介) - Y!ニュース
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryosukenishida/20161027-00063761/
上のエントリで予告していた「対談」が公開されました。かなり話題になっているようです。
「日本の精神性が世界をリードしていかないと地球が終わる」 安倍昭恵氏インタビュー
http://blogos.com/article/197071/
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryosukenishida/20161027-00063761/
上のエントリで予告していた「対談」が公開されました。かなり話題になっているようです。
「日本の精神性が世界をリードしていかないと地球が終わる」 安倍昭恵氏インタビュー
http://blogos.com/article/197071/
サードプレイス「西田亮介 ride on the politics」もRadikoのタイムシフト機能を利用できます。
ぼくがパーソナリティを務める東京、大阪等を除くJFN系列各局毎週火曜日朝5時半〜サードプレイス「西田亮介 Ride on the politics」もRadikoのタイムシフト機能を活用できます。プレミアムうの契約をすれば、東京等でも聴取可能ですので、よろしくお願いします。以下に、FM群馬のリンクを貼っておきます。
http://radiko.jp/#!/ts/FMGUNMA/20161108053000
http://radiko.jp/#!/ts/FMGUNMA/20161108053000
2016年11月8日火曜日
11月7日(月)TOKYO MX『モーニングクロス』コメンテータでした。
11/7(月)今朝のゲストは東京工業大学准教授で社会学者の西田亮介さん、初登場!電気通信大学人工知能先端研究センター教授の坂本真樹さん、プロゴルファーでスポーツ界の裏事情に詳しいタケ小山さん。そしてみなさまからのタブーなきご意見も随時紹介します、ハッシュタグは… #クロス pic.twitter.com/MphLPsfWg1— モーニングCROSS (@morning_cross) November 6, 2016
『一言いいたいオピニオンCROSS』まずは西田亮介さん@Ryosuke_Nishida 。テーマは「国民投票、最低投票率が議題に」#クロス— モーニングCROSS (@morning_cross) November 6, 2016
西田亮介先生の話は、何時も分かりやすくて好きだな(^ω^) #クロス— anarchist (@___anarchist) November 6, 2016
黒田さんやタケ小山さん世代の、いい感じの先輩世代の方々の元気キャラに不元気キャラのぼくも元気をいただいてきました。
2016年11月6日日曜日
11月5日に青木裕子さんナビゲートのJ-WAVE 「RAKUMACHI BIZ8」に出演しました。
11月5日に青木裕子さんナビゲートのJ-WAVE 「RAKUMACHI BIZ8」に出演しました。
http://www.j-wave.co.jp/blog/acoustic/archives/news_topics/
アメリカ大統領選挙におけるネット選挙やメディア戦略、日本への影響等にコメントしています。青木裕子さんが83年生まれで、学部は違えど慶應卒ということで、ちょっと親近感を持ちました。ナイナイ矢部さんと結婚したことは知っていましたが、同い年や慶應卒とは全然知りませんでした…。
http://www.j-wave.co.jp/blog/acoustic/archives/news_topics/
アメリカ大統領選挙におけるネット選挙やメディア戦略、日本への影響等にコメントしています。青木裕子さんが83年生まれで、学部は違えど慶應卒ということで、ちょっと親近感を持ちました。ナイナイ矢部さんと結婚したことは知っていましたが、同い年や慶應卒とは全然知りませんでした…。
2016年11月2日水曜日
なぜ日本の大学政策は国内外からの指摘にもかかわらず運営費交付金削減と競争的資金政策に拘り続けるのか
昨今、にわかに大学、とくに国立大学法人の経営難と環境悪化が報じられている。
国立大の基礎研究費削減、全国の理学部長らが反対声明:朝日新聞デジタル
国立33大学で定年退職者の補充を凍結 新潟大は人事凍結でゼミ解散 | THE PAGE
大学ランキングに一喜一憂するべきではないという声明も出されるが、自分の研究室に来た留学生たちに聞いてみても、一様に大学ランキングは見ているという。ひとつの大学選択の基準になっていることは否定出来ないだろう。その大学ランキングのひとつ、タイムズ・ハイヤー・エデュケーション(THE)で、日本の大学ランキングは近年低迷傾向にある。THE2016-2017年版では東大は世界ランキング39位、東アジア7位となった。世界ランキング100位以内にランクされているのは、東大と京大のみである。なお理工系が強い項目を重視するため、私大はこのランキング上位(アジア上位50位内)には出てこない。
もうひとつの著名なランキングQSでは、東大が世界34位、京大37位、東工大56位、阪大63位、東北大75位など、100位以内にもう少し多くの大学がランクインしている。
中国は別枠としても、シンガポールや香港のような小さな国、地域は大学の数も少なく集中投資可能だが、大学が質量ともに多様で、大学制度が一定の成熟を見せた日本ではそうもいかないため、独自のアプローチは必要だ。
それにしても、なぜ日本の大学政策は国内外からの指摘にもかかわらず運営費交付金削除を継続し、競争的資金政策に拘り続けるのだろうか。年間1%削減を継続し、すでに国立大学の法人化以来10年あまりその削減を継続している。投資の増額はともかくとして、1%のカットを10年続ければ10%カットである。そして、国立大学法人は全国で86存在するが、この10年で10%、総額約1200億円がカットされている。
旺文社の下記の資料は運営費交付金の動向について端的にまとまっていた。
たまたま共産党が、運営費交付金削減が将来の大学学費値上げにつながるため、反対という姿勢を取っている「しんぶん赤旗」の記事を見つけた。素朴だがわからない態度表明ではある。その他の政党については、この問題に関するあまり明確な態度表明は見当たらなかった。
国立大学の運営費交付金/17年度以降は毎年削減
もしかすると、年間1%というと大したことがないように思えるかもしれないが、日本では労働法制上手がつけにくい人件費など費目を除くと、各部局に落ちてくる減額幅の要求は1%にとどまらず相当なものになることがわかる。これが毎年続いているのである。人件費については既存のポストについては手をつけにくいので、退職者ポストの補充凍結、新規採用人事から人件費のコントロールが比較的容易な年俸制任期付教員への置き換えが進められ、いよいよ人件費の削減等についても各国立大学で検討が始まっているはずである。
歴代ノーベル賞受賞者が口々に語る危機感「日本に基礎研究を伸び伸びやらせる環境なくなった」
日本の大学、順位低迷の理由に予算不足も?
なぜ東大は「世界大学ランキング」が低いのか 人文系学部「廃止騒動」は世界に逆行している | 学校・受験- 東洋経済オンライン
このようにノーベル賞受賞者らや、世界ランキングを提供するTHE社のコメント(下段記事内参照のこと)、冒頭の国立大学法人関係者らの声明を見ても、一様に教育研究投資の拡充、環境改善を要請している。なぜ、こうした声が一様に届かず、政策に反映されず、運営費交付金削減と競争的資金重視の政策傾向が続くのだろうか。
東大と慶應でクロスアポイントメントをもち、高等教育行政にも詳しいはずの鈴木寛氏の2015年のインタビューは正鵠を射ている。
世界大学ランキングでの苦戦は教育への投資を怠ってきた報い――鈴木 寛 文部科学大臣補佐官インタビュー
しかしその割には運営費交付金削減と競争的資金重視の政策傾向は少なくとも我々にはまったく変化の兆しが見えないように思われる。鈴木氏は2016年10月に大臣補佐官に任命されているはずだが、いったいどうなったのだろうか。
今年2016年の国会で国立大学法人法の改正が行われ、新たに指定国立大学法人制度が導入されることになった。多くの国立大学では指定に向けた準備でまた慌ただしくなっているに違いない。以前、ある有名な政治家が「この問題で我々のところに本気で陳情に来る人がいない」といっていたことを思い出したが、文教族の政治家でも良いし、文部官僚でもよいのだけれど、ぜひ有権者や関係者に現行政策の合理性についてわかりやすく提示してほしい。
ちなみに「産業競争力会議」の「成長戦略の進化のための今後の検討方針」には、下記の様に書かれていた。
卓越研究員をはじめ若手研究者の人材育成・強化等の観点から、科学研究費助成事業など競争的研究費の在り方について検討する。
しかしながら競争的研究費がもたらす間接経費では、たとえば建物の老朽化対策の予算や安定的なポストのための人件費は賄えない。問題は本来は各大学の特徴を自由に活かすために国立大学法人化した一方で、「財布」の権限委譲に十分に取り組まず、文科省がときどきの政策意向に応じて場当たり的かつ紐付きかつ競争的資金偏重にデザインしている影響が強いようにも思えるがどうか。
今のところまったく国立大学法人化のメリットを活かせていないうえに、国立大学の基礎体力を着実に奪っているとしか思えない。政府は2013年に「日本再興戦略」を掲げ、2023年に世界ランキング100位以内に10校以上をランクインさせるということを掲げている。この2013年の「日本再興戦略」には、次のように記されている(p.5)。
日本の大学を世界のトップクラスの水準に引き上げる。このため国立大学について、運営の自由度を大胆に拡大する。世界と肩を並べるための努力をした大学を重点的に支援する方向に国の関与の在り方を転換し、大学の潜在力を最大限に引き出す。
ここでいうところの「運営の自由度の大胆な拡大」は具体的には何を指しているのか不透明だ。「指定国立大学法人制度」のことかもしれないが、各国立大学法人は指定の獲得に躍起になっていて、まったく「自由度の拡大」には貢献していないように思われる。単なるボヤキだが、本文中の「年俸制の本格導入」が大学改革の「先駆的な取り組み」の筆頭に挙げられているが、適用対象は労働契約上新任の若手に限られる。筆者もその対象だが、資金繰りが乏しいなかだと昇給(幅)の期待に乏しく、あまりイノベーティブな人事戦略だという実感はない。むしろ動機づけに失敗しているようにさえ思えてくるが、どうか。少々検索してみて驚いたのだが、2013年版の「日本再興戦略」のなかには、「大学」という言葉が61箇所も出てくるようだ。それだけにとどまらない。最新版の「日本再興戦略 2016 ―第4次産業革命に向けて―」では、なんと156箇所に及ぶ。これは大学への期待なのだろうか。そのあたりはよくわからないし、とりあえず具体的アプローチの不透明な政策をとりあえずなんでもかんでも大学に絡めてみたように見えなくもない。しかしなにはともあれ「2023年に世界ランキングで大躍進」などという夢物語も良いが、関係者は国立大学法人の現状を直視するべきだ。
2016年10月31日月曜日
「ネット選挙とソーシャルメディア――社会は,データ化で加速する 「イメージ政治」 をいかにして読み解くか」を遠藤薫先生の編著に寄稿しました。
西田亮介,2016,「ネット選挙とソーシャルメディア――社会は,データ化で加速する 『イメージ政治』 をいかにして読み解くか」遠藤薫編著『ソーシャルメディアと<世論>形成』東京電機大学出版局,142-52.
2016年10月27日木曜日
安倍昭恵さんとの「対談」と、その影響力、政治性について
安倍昭恵さんの2016年10月26日Facebook投稿より引用。 |
表題のとおり、昨日10月26日、安倍昭恵さんと総理公邸にて「対談」しました。ただ、ぼくの認識では安倍昭恵さんがFacebookの投稿で書かれている「対談」と一言でまとめるには、もう少し背景が複雑ですのでエントリを書いておくことにしました。
対談は一般的に、主催者と企画があって成立するものです。雑誌の場合は出版社、ネットの場合はIT企業の編集部が、企画を作成し、論者を検討し、対談を収録します。ぼくも何度も引き受けたことがありますし、安倍昭恵さんに関するものでいえば、今夏政治の界隈では話題になった『AERA』誌の2016年8月8日号などもその典型例でしょう。この号の大特集は「子のない人生」。その巻頭インタビューに安倍昭恵さんが登場しています。
それに対して、今回の「対談」は下記の記事の、ぼくの長いコメントがきっかけでした。
安倍昭恵首相夫人の独自活動は自民党メディア戦略の一環か?(週プレNEWS)- Yahoo!ニュース
ネットでも話題になった、安倍昭恵さんと三宅洋平さんの邂逅について、『週刊プレイボーイ』誌からのコメント依頼があり、引き受けたものでしたが、その2日後に谷崎テトラさんからFacebook経由で「安倍昭恵さんが会いたいと言っている」という連絡がありました。選挙や政治を扱う仕事柄、それなりに政治家とのいろいろな「コミュニケーション」は経験があります。「圧力」ととるかどうかはケース・バイ・ケースといわざるをえませんが、一定の時間がたってから電話や編集部に(たいてい記録を残しにくいからではないかと思しき電話で第一報がきます。最近はスマホなのですぐ録音できてしまうのですが…)連絡を取ってくることが大半です(編集部とネットで同時に「コミュニケーション」してきた人もいらっしゃいましたが…)。なので、それなりに慣れているつもりではありますが、批判的な記事を書いてから随分な迅速に、ネット経由で、総理夫人本人の意向となると、さすがに例外尽くしということでいささかの驚きは禁じえませんでした。また社会起業家やメディア業界の知人たちのなかには安倍昭恵さんと面識のある方が何名かいるので風の便りで人物像については少し聞いていましたが、ちょっと身構えました。そこで、ぼくから面識のあるBLOGOS編集部にコンタクトを取って、コンテンツにできるのであれば、という条件でお引き受けしたというのが背景です。ですので、一般の対談とは性質が異なっているということは強調しておきたいところです。
ただし結論を先取りすると、詳細は2週間以内にはコンテンツとして公開されることになると思いますが、直接的な意味での「圧力」どころか、詰問口調での質問さえありませんでした。さらにいえばちょっと拍子抜けというか、安倍昭恵さんはそれほどぼくに関心を持っていたというわけでさえなかったという印象です。というのも、形式的には先方から呼ばれて「対談」したことになると思いますが、なぜか「対談」は主に谷崎テトラさんとぼくから質問するというかたちで進行しました。安倍昭恵さん本人からの質問はかなり少なく、ぼくのこれまでの仕事や主張に強い関心を持っておられる様子ではありませんでした。名刺代わりに『メディアと自民党』と『民主主義』を持参しましたが、これらの書籍の著者であることもあまり認識されていなかった様子でした(その意味でいえば「対談」して明らかになった安倍昭恵さんの関心との兼ね合いでいうなら、『無業社会』をお持ちすればよかったと少々後悔しています)。しかし意図せずというべきか、「対談」では、前述の『AERA』誌に掲載されたインタビューとはまったく違う角度から、安倍昭恵さんの素の「人となり」に迫る内容になっており、これはこれで広く読んでいただく価値のある実りあるものになったと確信しています。
考えてみれば、総理夫人の政治性と影響力というのは、なかなか興味深い論点です。政治家本人は自ら立候補して、選挙で有権者から選ばれるという意味において、主体性と正統性の比較的明確な契機があります。その一方で、総理夫人となるとどちらも明確ではありません。いわば「非公式な政治的影響力」とでもいうべきか、あるとき突如として本人の好みとはまた別の次元で、公人となることを要請されるわけです。日本の場合、選挙の応援演説に行くことも求められるでしょう。安倍昭恵さんも同様です。今夏の参院選においては、たとえば自民党の朝日健太郎議員の応援に立たれたようです。
こうした事実を考慮すれば、好むと好まざると「総理夫人」という看板は少なくともその立場にある限りは下ろすことができないといわざるをえないのではないでしょうか。多様な人のつながりや日本のファーストレディとして極めて新しいタイプの個人での積極的な活動も、多くの人が安倍昭恵さんの政治性や影響力を期待することでかたちになっている側面もあるだけに、その役割を引き受け、より生産的な活動につなげていっていただきたいと思います。安倍昭恵さんは「話して分かり合えない人はいないと信じている」という趣旨の発言を随所でされていますが、対象的にというべきかぼくは「原則として人は分かり合えないが、共存することもできる」と考えています。「対談」してもやはり我々は「分かり合えた」とはいえませんが、その「成果」は遠くないうちに広く読んでいただけるコンテンツになるはずですので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。
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