2015年5月30日土曜日

ショートボード再入門



1年に小さくてもいいから1つずつくらいは新しいことを始めたい。年齢が上がるにつれて、段々そういうことは難しくなっていく。普段ボリュームを出した短いオルタナティブボードに乗っていることが多いが、いっそハイパフォーマンス系のショートボード再入門してみたい気がしてきた。この2年ほどジム通いも習慣化して、20代後半〜30歳頃までの不摂生状態からだいぶ脱出できて、体力的にもその頃よりずっと改善しているので、今ならもう一度ショートボードに乗れるようになるのではないか。そう思っていたところに、見事なタイミングで冬のあいだショップスタッフの人たちが乗ってたKⅡというモデルをリーズナブルな価格で譲ってもらえた。5’6で本当に乗れるのかな、と半信半疑で思っていたところ、小波の湘南と千葉で乗ってみたら、確かに乗れる。昔のこういうタイプのショートボードと違って、中心部に浮力が集まっている感じで、むろん動画みたいにはいかないものの、テイクオフやパドルに困るということはまったくなかった。というわけで、今年からしばらくショートボードに勤しむのが趣味での目標ということになりそうである。35歳までに目指せエア。

ネット選挙の「理念なき解禁」と同じ轍を踏まない18歳選挙権の導入と実践を

衆院政治倫理・公選法改正特別委員会で、選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公選法改正案、いわゆる「18歳選挙権」の実質審議に入ったことが報道されている。6月2日にも採決が行われる見通しのようだ。
18歳選挙権、審議入り 「若者の考え政治に反映」- 47NEWS(よんななニュース)
18歳選挙権、来夏適用へ 衆院委、来月2日に採決
大前提として、まず18歳選挙権自体は肯定されるべきものように思われる。世界的な動向を見ても、違和は少ない。ただし、日本の政治(理解)と有権者を取り巻く構造的な問題を看過するべきではない。
例えば、上記の記事には、政治家の「若年世代の考え方が政治に反映され、従来高齢世代を向いていた政治が若年世代のほうを向く」とある。これは明らかにミスリーディングだろう。昨日Twitterでこの話題を呟いていたら、「独身者の数が増えても、結婚する人の数が増えるとは限らないということですか?」というコメントをいただいた。言い得て妙である。
政治と政治家の権力の源泉である議席を直接規定するのは「(投票)率」ではなく「(得票)数」である。18歳に投票年齢を引き下げると、概ね200万人程度の有権者が新規に追加されるが、極端な少子高齢化が進行した日本では例えば団塊世代の1年分の人口にも及ばない。投票率も半分程度だが、そもそもオーダーが異なる。また既に以下のように論じてきたように、若年世代に限らず、そもそも日本には民主主義を理解するための道具立てやフレームワークを形成する機会も少ない。
社会に政治を理解し、判断するための総合的な「道具立て」を提供せよ――文部省『民主主義』を読んで(西田亮介)- Y!ニュース
「若者が投票に行かないから、若者向け政策が実現できない」という政治家を信用するな。(西田亮介)- Y!ニュース
このような文脈のもとで、安易に「18歳選挙権を解禁すれば、若者の政治参加、政治意識が変わる」という議論を展開することで、まったくの期待はずれに終わる可能性がある。2013年の公選法改正によるネット選挙解禁を筆者は「理念なき解禁」と呼んだが、結果はどうか。政党の広報費は増えたものの、現在では候補者や政治家のアクティブな利用も減っている。政治のパワーバランスや各政党の論調を見ても、おそらくは18歳選挙権は来夏の参院選から適用される。まさに憲法改正や安保問題も話題になっているが、意図しないままに現状の政治態勢を強化する可能性もある。どのように有権者の政治理解と政治参加を促進していくのかという問題を改めて考える機会なのではないか。

2015年5月28日木曜日


三菱ギャランフォルティススポーツバックラリーアート。購入後、だいたい1500kmくらい乗った。ちょっとした外車や、前に乗ってたSaab9-3よりよっぽど速い。国産車だからかSaabに乗ってたときと違って、たまに煽られたりしてめんどくさい。写真だとコンパクトに見えるけれど、後部座席も結構広い。その分、ハッチバックのスペースは狭いか。四駆だしビーチまで乗り入れてもスタックする不安も少ない。ATの超低速時の変速がときどきショックが大きくなるのが玉に傷。あと三菱のラインナップから後継車種がなくなったので、基本的に乗り継ぐことはできない。

2015年5月26日火曜日

2015年6月5日(金)19時〜@ゲンロンカフェ 西田亮介×三浦瑠麗「大阪都構想の可能性をいまこそ考える——なぜ橋下は敗れたのか」 @Ryosuke_Nishida @lullymiura

2015年6月5日(金)19時〜@ゲンロンカフェ 西田亮介×三浦瑠麗「大阪都構想の可能性をいまこそ考える——なぜ橋下は敗れたのか」

国際政治学者の三浦瑠麗さんと対談します。勝った、負けたもさることながら、この経験から何を読み解くことができるかという点を議論することになるんじゃないでしょうか。ポピュリズムのあり方、将来の国民投票、選挙運動(投票運動)等々、メディアでは一瞬で見聞きしなくなりましたが、大変豊かな問題系だと思います。
申し込み、詳細は以下から。
http://peatix.com/event/92164

(以下、http://peatix.com/event/92164より引用)
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【イベント概要】
2015年5月17日、橋下徹氏率いる大阪維新の会が掲げる「大阪都構想」が、
住民投票で否決された。

賛成49.62%と反対50.38%とたいへんな僅差だが、
この否決によって、大阪市の改革はストップ、
橋下氏は政界を引退することになる。

日本にとって、地方自治にとって、
大阪都構想とはいったいなんだったのか。

その敗北は今後の日本社会にどのような影響をもたらすのか。

そもそも大阪都構想には日本を変える力があったのか。

政治学者の三浦瑠麗と社会学者の西田亮介、
ふたりの気鋭の若手が
大阪都構想住民投票否決から日本の行方を論じる
緊急開催イベント!


大阪市における特別区設置に関する住民投票の結果は、僅差で橋下徹大阪市長サイドの敗北に終わりました。
今回の住民投票には、その過程、結果に学ぶべき点が多数あります。
まず住民投票を基礎づける大都市地域特別区設置法が国民投票法と相当程度似ているため、
将来、憲法改正の国民投票が実施される際には、類似の投票運動が全国規模で生じることが予想されます。
そのときの課題や、事前準備すべき事項とはなにかという点でしょう。
もちろん、なぜ、橋下氏らは負けたのか、という問いも気になります。
三浦瑠麗さんは、ブログ「山猫日記」で、「ポピュリズムが足りなかった」と指摘します。
個人的にも似た印象を持ちますが、しいて差別化してみれば「ポピュリズムを刺激する精度が足りなかった」という認識でいます。
しかし政治家や政党によるポピュリズムを刺激する精度が向上したとして、それは有権者にとって望ましい事態なのでしょうか。
例えば誰もよく実態が分からないうちに、憲法改正の是非が決定してしまいかねないかもしれません。
このように考えるならば、今回の住民投票に学ぶべき点は数多く存在し、多くの国民に関係してきます。
またどのような超克の可能性があるのでしょうか。このような主題を三浦さんとともに考えてみたいと思います。(西田亮介)

【登壇者プロフィール】
三浦瑠麗(みうら・るり)
国際政治学者。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了(法学博士)、東京大学政策ビジョン研究センター客員研究員。株式会社山猫総合研究所代表。フジテレビのインターネットニュース、ホウドウキョク「あしたのコンパス」木曜アンカー。単著に『シビリアンの戦争―デモクラシーが攻撃的になるとき』岩波書店、『日本に絶望している人のための政治入門』文春新書。

西田亮介(にしだ・りょうすけ)
1983年京都生まれ。立命館大学大学院先端総合学術研究科特別招聘准教授。博士(政策・メディア)。専門は情報社会論と公共政策。著書に『ネット選挙――解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)、『ネット選挙とデジタル・デモクラシー』(NHK出版)など。近著に工藤啓との共著『無業社会――働くことができない若者たちの未来』(朝日新書)がある。
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申し込み、詳細は以下から。
http://peatix.com/event/92164

2015年5月25日月曜日

研究会企画とマネジメントセミナー「研究会を始めよう」


立命館大学大学院キャリアパス支援プログラムで、院生の皆さん向けに、研究会がどのようにキャリアに関わってくるのか、また研究会をどうやって企画運営するのか、それらをいかにして実践するかをワークショップ交えて話しました。4年目なので、なかなか良い感じでした。


研究会企画とマネジメントセミナー「研究会を始めよう」を開催しました。5月19日(火)、衣笠キャンパス究論館にて 研究会企画とマネジメントセミナー「研究会を始めよう」を開催しました。本セミナーの講師は西田亮介・先端総合学術研究科特別招聘准...
Posted by 立命館大学大学院キャリアパス推進室 on 2015年5月20日


西田亮介,2015,「研究会をはじめよう」2015年度立命館大学大学院キャリアパス支援プログラム@立命館大学究論館(2015年5月19日).

http://www.ritsumei.ac.jp/ru_gr/g-career/program/list/article.html/?id=64

「高度なデータ分析で 「イメージ政治」 を読み解き, 政治に緊張感を取り戻せ」『Journalism』

しばらく前に書いた原稿を、Google Scolarで発見。たぶん、こっちには貼っていなかったので、張っておきます。

西田亮介,2015,「高度なデータ分析で「イメージ政治」を読み解き、政治に緊張感を取り戻せ」『Journalism』299: 60-7.


2015年5月24日日曜日

学振応募書類で、最後にもう一度チェックすべき3つのポイント

院生、PDのみなさんのなかには、今日明日にひと山迎える人が少なくないかもしれません。学振特別研究員の応募締切が迫っているからです。筆者の勤務先の場合、金曜日までに所属機関で修正申請を申請していれば、日曜日から月曜日に日付が変わる瞬間まで修正できる仕組みです。その、最後の「ひと押し」をどのように修正するか、頭を捻っている人もいるのではないでしょうか。先日、下記のようなエントリを書きました。結構多くの人に読んでいただいたみたいですが、少なくとも人社系で分野をあまり問わない、ごく基礎的な、しかし陥りがちなトラップを列挙してみたというわけです。
学振と戦う院生、PDのみなさんへの基本的Tips(主に人社系)(西田亮介)- Y!ニュース
まさに、現時点では、残り12時間ほどになり、修正の方向性のアドヴァイスも順調に揃っているかもしれません。筆者は、この数年、勤務先の人社系の書類N十枚すべてに、業務でおもに形式的なセカンドオピニオンをコメントしています。そこで最後にもう一度、チェックすべき、そして、さっと直せる形式的なセカンドオピニオンを以下3つだけ並べてみることにしたいと思います。
・ナンバリングの統一
・字下げ、箇条書きの統一
・否定形が並ぶ表現になっていないかどうか。
まず「ナンバリングの統一」から説明します。書類のなかで用いている見出しの番号ですが、途中から切れたり、ルールが変わっていませんか。また具体例や、下位の項目を表現するとき、突如、別のルールになっていませんか。よく見かけるのが、それまでアルファベットで表現していたのに、突如として数字になったりするパターンです。その逆もしかりです。突如表記形式が変わると、読み手(審査する人)は意味を見出そうとしてしまいます。少なくとも混乱のもとであまり印象はよくありません。またナンバリングの際に、「1、2、3・・・」(Yahoo!の仕様上、フォントの関係で使えないようですが、マル1、マル2・・・とみなして下さい)の形式を用いている人は、この表記形式は、「現在までの研究状況」や「これからの研究」のリクエストで用いられているので、対応しているかよく考えてみましょう。もし意識せず用いている場合は、読み手からすると、対応しているように見えてしまうので、別の表記ルールを考えてみてもよいのではないでしょうか。これは、「現在までの研究状況」と「これからの研究」でのナンバリングの対応関係にも同じことがいえます。
・次に、「字下げ、箇条書きの形式」ですが、これも先ほどと同じような指摘です。段落冒頭に字下げがあったりなかったり、箇条書きの形式がある部分では、「・」だったものが、別の箇所では「◆」になっていたり・・・散見します。箇条書きのインデントのレベルがまちまちだったりすると、これもやはりあまりよい印象を与えません。
・最後に、「否定形が並ぶ表現になっていないかどうか」という点です。すでに冒頭の別エントリでも書いたのですが、「本研究の目的は、Aではなく、Bではなく、Cではなく、・・・◯である」という表記を大変よく見ます。亜種として「本研究の課題は、Aではなく、Bではなく、Cではなく、・・・◯である」といったものなどがありました。こういう表記をすると、少なからず文の途中で論理的に破綻したり、主語と述語の対応関係がわかりにくくなったりします。「本研究の目的は◯である。◯とは・・・」といった形式などに書き換えてあげると、ちょっとした修正で、ぐっと正確な意図が伝わりやすくなると思います。
むろん内容や最終的な判断は自分と指導の先生方とのコミュニケーションのなかで決めるわけですが、これらの点は実に低コストで、大変計画書が読みやすく修正できる点でもあります。最終提出前に、もう一度チェックしてみてはいかがでしょうか。院生、PDの皆さんの、最後の追い込みが功を奏することを願っています。

イメージ政治と大阪住民投票

最新の話題について、検討しました。

西田亮介,2015,「イメージ政治と大阪住民投票」@国際公共経済学会情報社会と政策形成研究会(2015年5月23日@東洋大学白山キャンパス).


2015年5月21日木曜日

2011年5月21日(木)東京MX『モーニングクロス』出演してきました。

2011年5月21日(木)東京MX『モーニングクロス』出演してきました。山口真由さん、にしゃんたさんがゲストで、堀潤さんや、SFCの先輩の脊山麻理子さんらがレギュラー出演でした。朝からハイテンションに、ニュースを素材に討論というのは新しいのかもしれません。来月の今頃に、再度出演が決まりましたので、その節はまたよろしくお願いします。

2015年5月20日水曜日

2015年5月20日「ホウドウキョク」「明日のコンパス」に電話コメントしました。

昨晩、フジテレビ系のネット&NOTTVで見視聴できるという「ホウドウキョク」「明日のコンパス」に電話コメントしました。やはり大阪の住民投票関連です。国際政治学がご専門の三浦瑠璃さんがメインコメンテータ(?)でした。文春新書の帯写真などから、キリッとして、ちょっと怖い感じなのではないかと勝手に身構えていたら、大変柔和なお声の方でした。三浦さんがブログ「山猫日記」に書いていた「ポピュリズムが足りなかった」という点を議論したいなあ、などと思っていたのですが、ちょっと尺が足りませんでした(かなりの長尺をいただいたのですが・・・)。三浦さんの挙げていらっしゃる具体例とはちょっと異なる考えを持っているのですが、また機会があれば何か書いてみます。強いて言えば「ポピュリズムの精度が足りなかった」んじゃないかというようなことを考えています。明日は早朝に、東京MXの「モーニングクロス」です。まだ京都から戻っている途中なので、起きられるか一抹の不安を抱えています・・・

※事前にノーギャラならやらない旨を伝え、放送終了後にリマインドしたにもかかわらず、現在もギャラの連絡が来なくてとても残念な気持ちでいます。同グループの、某オンラインメディアも、何度もノーギャラでブログエントリ転載の依頼が来て断ったのですが、保守系メディアの懐の小ささには結構辟易としています。鷹揚さは、保守の重要な要素だと思うのですが、どうも現代では事情が違うようです。やれやれ。いずれにせよ、スタッフの人は見たら至急連絡を下さい。

2015年5月19日火曜日

[西田亮介]【憲法改正の国民投票と政治理解の導線を再考せよ】〜ポスト大阪都の戦いに何を見るか〜

安倍編集長のご依頼で、さらさらと書いてみました。先日のYahoo!ニュース個人への投稿に少々手を加えたといったところです。取り敢えず、Excelソロバンを弾いて、まだ選管からの、公式の世代別投票率が公開されていませんが、過去の投票率を参考にした仮定を置いて、複数試してみたところ、確かに巷でいわれるシルバーデモクラシーは怪しそう。出口調査のデータによると、性別や居住歴も弱そうで、大阪のなかでも都市部と非都市部の温度差説が有力な気がしています。非都市部といえば、さまざまな既存勢力の動員が効きやすいエリアで、そういえば、今回普段は犬猿の中のそれらの勢力は、それぞれの思惑で、揃って反対に回ったのが効いたんじゃないか、などと考えていますが、飽くまで現状仮説の域を出ません。世代別の公式投票率が出たあたりで、精査するのが良いのではないでしょうか。

[西田亮介]【憲法改正の国民投票と政治理解の導線を再考せよ】〜ポスト大阪都の戦いに何を見るか〜
  http://japan-indepth.jp/?p=18298

荻上チキ・Session-22│2015年05月18日(月)「大阪都構想をめぐる住民投票」(探究モード) 電話コメントしました&Podcastになってました

昨晩、電話コメントしました。もうPodcastになってました。はやっ。

荻上チキ・Session-22│2015年05月18日(月)「大阪都構想をめぐる住民投票」(探究モード)
http://www.tbsradio.jp/ss954/2015/05/20150518-1.html

さしあたりの見解は以下。

[西田亮介]【憲法改正の国民投票と政治理解の導線を再考せよ】〜ポスト大阪都の戦いに何を見るか〜 http://japan-indepth.jp/?p=18298

「大阪都」をめぐる選挙運動の攻防から見えるもの――憲法改正の国民投票を先取りする景色か?(西田亮介) - Y!ニュース http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryosukenishida/20150517-00045796/

2015年5月18日月曜日

共同通信配信識者評論「若い世代と政治」「学ぶべき終戦直後の試み 『無音』選挙に思う」立命館大特別招聘准教授西田亮介

先週末5月13日付で、共同通信さんから、2000字ほどのオピニオンが配信されました。各地方紙で、面白いと思っていただいた場合には掲載されるのではないでしょうか。どこかで掲載されたものを見かけた人がいたら、教えて欲しいです。

2015年5月13日共同通信配信識者評論「若い世代と政治」「学ぶべき終戦直後の試み 『無音』選挙に思う」立命館大特別招聘准教授西田亮介

2015年5月17日日曜日

「大阪都」をめぐる選挙運動の攻防から見えるもの――憲法改正の国民投票を先取りする景色か?

いわゆる「大阪都」への第一歩を踏み出すか否かを問う、住民投票が佳境を迎えている。あと数時間で投票が締め切られ、今日中にでも、勝敗が決まる。
大阪都構想を巡る攻防は、攻める側の議論がわかりやすいのがいい。最近ひさびさに自治体の事業をよく見てみる必要があって、総合計画、実施計画、要綱、要領まで並べて見るのだが、なぜそのようになっているのか、なぜそのように運用/評価するのか、誰も分からない事業があったりする。
他方で、大阪市の予算のページを見てみると、予算の概要とかなり詳細な解説をPDFで付けた市のページに到達する。人件費の伸びは人事院勧告によるとの解説まである。職業柄、この可視化と、分かりやすさ、ソーシャルボタンの設置あたりが、とても興味深く、また好ましく思える。
平成27年度当初予算(平成27年3月13日修正議決)
とはいえ、大阪市民以外にとっては、今回の住民投票は、少々蚊帳の外な印象も否めない。ネットはそこそこ盛り上がりを見せているが、マスメディアはそうでもない。朝から週末恒例の各局の討論番組や週末ワイドショーを流し見していたが、そこでの主たる話題は安保法制だった。
橋下徹という政治家の行方、維新の党の行方、2000年代から盛り上がりを見せる自治体改革と道州制の行方など、さまざまな政治環境の分水嶺となる住民投票だが、気になっているのは、それがこの住民投票を巡る「選挙運動」(投票運動)についてである。もう少しいうなれば、この選挙の風景は、将来の憲法改正の国民投票を先取りする景色かもしれないということである。
今回の選挙は、すでにネットや新聞各紙でも触れられているように、一般の選挙とは少々異なった選挙運動が繰り広げられている。
東京新聞:「大阪都構想」合戦過熱 投票運動 制限緩く:政治(TOKYO Web)
ビラもCMも無制限 大阪都構想の住民投票運動「解禁」- 朝日新聞デジタル
「大阪都構想」住民投票始まる 11時の投票率14.15%  :日本経済新聞
これらの記事を読むと、通常の選挙運動と異なり、当日の今日も、賛否の意見表明が繰り広げられていることがわかる。ところが、これらの記事からは、なぜ、通常の選挙運動と異なるのか、という点についての説明があまりなされていないように感じる。ところが、この点に、将来の憲法改正の国民投票を先取りする理由があると考えられるので少々掘り下げてみたい。その理由は、公選法とは異なる法律を用いつつ、主要な部分を公選法の準用による建付にしていることに起因する。
一般の選挙は公職選挙法、今回の大阪都を巡る住民投票は大都市地域特別区設置法、そして憲法改正を巡る国民投票は国民投票法がそのあり方を規定する。拙著のなかでその特徴を「均質な公平性」と表現したが、日本の選挙運動は、公選法が制限列挙形式を採用することにより、外形的な制約の強い選挙になることが多い。
大都市地域特別区設置法、国民投票法では、その点を巧妙に回避している。通常の選挙と異なり、大阪市の住民投票と、憲法改正の国民投票は「候補者なき選挙」である。公選法は、政治家や政党、関係者による贈収賄や売買収を防ぐことに重きを置いている。ところがこれらの選挙では、候補者は存在しない。理念型としては、ある制度変更とその理由を周知し、有権者はその内容を理解し、是非について一票を投じることが期待されている。周知とその方法に、一般の選挙よりも注力する必要があることから、建付の多くを公選法の準用にしながら、公選法の制限列挙部分を大幅に緩和したものと考えられる。
大都市地域特別区設置法と国民投票法では、前者のほうが生活に密着した側面が強いからか、前者の方がテレビCMの期間などでさらに緩和されているが、概ね似ている。ということは、先の記事にあったような当日の運動や資金を相当程度投入したと思われる選挙のあり方、ポスターの枚数等への制限のなさなどは、憲法改正の国民投票の際にも、より本格的な、そして全国を巻き込む形で踏襲されると考えて良い。広告代理店も、本気になるだろう。
実際に、どのような選挙運動が行われ、どのような課題が生じたか、有権者はきちんと大阪都構想の意義を理解して投票できたか、といった点は、これからの報道や検証を待つ他ないが、それらはやはり憲法改正の国民投票を先取りする景色であり、その縮図である可能性が高い。加えて憲法改正の議論の際には、投票年齢が18歳になっている可能性が高い。現状、有権者が政治を理解し、大量情報を取捨選択しながら、的確に選択できているかというと心許ない。筆者も、自分が住んでいるエリアの首長選挙はまだしも、議員選挙になると、自信がないというのが正直なところである。
社会に政治を理解し、判断するための総合的な「道具立て」を提供せよ――文部省『民主主義』を読んで(西田亮介)- Y!ニュース
また判例や前例が少ないこれらの選挙で、きちんと規制が機能するかも気になるところである。先に部分的に解禁になったネット選挙では議論が煮詰まらないままに、解禁論だけが先行した。拙著では、その様子を「理念なき解禁」と表現したが、さすがに憲法改正が「理念なき改正」では困る。これらの点は大阪市民以外の日本国民も注視する必要があるだろう。
他にも、過去のマニフェストでかなり肯定的な表現をしていた自民党と公明党の大阪支部と一部の国会議員の反対表明がマニフェスト運動を後退させうるものであることが気になっている。だが、分量もかなり増えてきたので、また投票結果が出たあとにでも、機会があれば言及してみることにしたい。

2015年5月16日土曜日

石戸諭×西田亮介「18歳からの政治参加入門――インターネットと政治を考える」

木曜日に、毎日新聞社の石戸諭記者と対談しました。そのツイートから。多くの方に来場頂きました。新聞各社、ネット各社、現職議員、議員秘書、PR企業社員などプロの方の姿も多く見えたのも印象的でした・・・ゲンロンカフェも結構回数出させていただいたので、かなり勝手もわかって、個人的にはもっとも快適な講演、イベント会場のひとつ。仕様、会場の距離、上田さん、徳久さんはじめスタッフの皆さんもよく知っている。登壇したら、ビールもフリー。快適すぎる。ありがとうございました。また機会があれば、登壇したいですね。

石戸諭×西田亮介「18歳からの政治参加入門――インターネットと政治を考える」

2015年5月14日木曜日

「2015年体制」と「潮止まり」の政治状況

3月号に紙面掲載されたコンテンツがWebにも公開されました。統一地方選など幾つかの政治イベントがありましたが、大局観としては当時と大きく変わらないのではないでしょうか。

「2015年体制」と「潮止まり」の政治状況
http://blogos.com/outline/112023/

2015年5月13日水曜日

学振と戦う院生、PDのみなさんへの基本的Tips(主に人社系)

時期的に、おそらく学振関連の書類と戦っている院生、PDの皆さんは少なくないのではないでしょうか。各大学で、まず学内締切が近づき、追い込み中だと思います。研究者としてやっていくなら、科研費の書類もほぼ同様のフォーマットなので、原則、生涯このフォーマットと格闘することになります。それから、取れる/取れないで、その分をたとえばアルバイトで稼ぐのに費やす機会コストも含めると大きなギャップになりますので、頑張ってみる価値は十分あるといえるでしょう。もし取れなくても、10枚近い分量で、自分の研究計画をきちんと記述すると、年度始めに研究脳をリフレッシュしたり、研究自体を再考するよい機会になるはずです。
人社系院生が、学振なしで生活するために必要なコスト試算(仮)(西田亮介)- Y!ニュース
この数年、勤務先で、学内の人社系の申請書類の相談、点検、個別対応を業務でやっています。昨日、今日は、半日ほど個別相談をやっていました。毎年やっていると、いろいろと気づくことや共通の失敗が見えてきます。むろん、ぼくも偉そうなことをいえるほどたくさん研究費をもっているわけではないのですが、それでもこの数年は科研費をはじめ、いろいろと研究費を取れるようになってきました。過去の自分の反省も含めて、ごく基本的な事項を幾つか、Tipsとしてまとめておきます。なお、筆者は政策研究を専門とする、社会科学系のバックグラウンドを持っています。
・「現在までの研究」の欄に、今後の研究計画を書かないように注意しましょう。それは「これからの研究」欄に書きます。ごくごく初歩的ですが、なぜか例年たくさん見ます。徹夜で書いたと思しきケースなどでよくあるようです。「現在までの研究」欄が現在形中心で書かれていたら、要注意かもしれません。「現在までの研究」に今後の研究計画を書くと、「これからの研究」で書くことが無くなったり、同じことを繰り返すことになります。そのあたりもシグナルになりそうです。
・続けて、やはり学振は、基本自己PRであり差別化のゲームです。「現在までの研究」に、一般的な「当該分野の動向」だけではなく、「自分の研究履歴」を、現在の研究の観点から、再構築したものも書き込んでおくと良いと思います。当時の研究テーマに、仮にたまたま(あるいは、指導のなかで)出会ったとしても、それそのまま書く必要はないでしょう。
・形式の統一。例えば「現在までの研究」では、見出しの頭に「■」を使っているのに、「これからの研究」になると「◆」になっていたりします。参考文献や業績リストを複数の書類からコピペしたときにもフォントや順番が変わったり、ピリオドの有無が統一されなかったりすることがあるようです。やはり見栄えが良くないと思います。適切に、小見出し、改行、段落冒頭1字下げ等を使いながら、見やすく書くと良いと思います。時々、改行や段落等がないまま、枠内にびっしり字が埋まっている書類を見ますが、正直、読むのがツラいです。
・続いて書類表現のTips。「Aではなく(Bでもなく、Cという視点を取り入れてた場合云々・・・・)、A’」という表現をよく見かけます。ツッコまれないようにという配慮だと思いますが、とても読みにくいです。「本研究(≒研究目的は、研究方法は、)は、A'」と一度言い切って、以下、A'を実現する方法、視点等説明を加えると読みやすいと思います。分野によっては、文章が短いことに不安を覚える人もいるかもしれませんが、審査においては多くの、同種の書類のなかで、必ずしも専門がぴったり同じ「というわけではない」研究者が見るということを思い出してみましょう。
・「再考する」「捉え直す」表現がよく出てきます。結局どのように再考することかが書かれていません。分野が異なると読み手は疑問符だらけです。そして学振の評価は、必ずしも、対象や文献、扱う人物に詳しい評価者がつくとは限りません。なお、「多角的」「多面的」「立体的」も、同様です。このように書いたあとに、一言具体例や、結局それで何が明らかになるのか、何がわかるのか、書き添えてあげると親切です。心当たりの皆さんは、もう一度見直してみるとよいと思います。
・研究方法や視点等を箇条書きにしたにもかかわらず、項目間の関連性と、なぜそれらの項目を取り上げたかについて言及がないものがあります。読み手からすると、ほかの可能性が気になったり、必然性が良く分からず、落ち着かない気持ちになったりします。
・独創性、新規性欄には「これまで取り組まれていない」旨がよく書かれています。しかし、その記述だけでは、「誰もやっておらず、しかも重要」であることは伝わりません。「誰もやっていないけど、しょうもないから」という可能性の排除に努めてください。
等々、気がつくままに、あまり分野依存的ではなく、ごく基本的ながらよくあるケアレスミスについて書き並べてみました。何かの参考になれば良いですし、当たり前だと思えるならそれはそれで良いでしょう。偉そうに書いてきましたが、ぼく自身も院生時代に、M2とD1で学振に挑戦しましたが、両方共取れませんでした。
しかし業務で点検するようになって、学振の採択率は低いものの(勤務先で申請者数に対して、採択率がだいたい十数%で推移)、前述のような、ごく基本的な形式的側面に注意を払うだけで、ぐっと上位に浮上することに気が付きました。換言すれば、分量も多いためか、形式を満たしていないものが多すぎなのです。多くの学振の点検作業では、誤字や、誤植、枠のサイズ確認等が中心のようです。ですので、先に挙げたような表現、論理的整合性、内容については自分で、あるいは先輩や研究仲間とともに確認することが原則です。その時の補助線になればと思います。
最後に何はともあれ、まず学内締切に提出することが最初のハードルになりますが、応募しないと始まりません。「完璧に書けないから」を言い訳にした中途半端な完璧主義者になることなく、なにはともあれ書き上げて、審査のまな板の上に乗りましょう。頑張ってください。

2015年5月12日火曜日

地方創生の時代にこそ、改めて自治体PDCAの検証と再構築を急げ

最近、仕事で、自治体の事業をいろいろと紐解く機会が増え気づいたことがある。自治体PDCAの形骸化である。
1990年代後半から2000年代の前半にかけて、自治体の事業へのPDCAサイクルの導入が流行した。改めて確認するまでもないが、PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)を繰り返すことで、業務改善と合理化を迅速に実現する手法である。ビジネス分野では一般的だが、90年代末の、自治体の緊縮財政、地方分権一括法に至る自治体事業の合理化のもとで導入が進められた。
当時は、「新公共経営」などとも呼ばれ、脚光を浴びたものである。その名残りで、今も総合計画や実施計画などのなかに、その文言を頻繁に見出すことができる。ところが、その自治体PDCAが、流行から10余年の歳月を経て、すっかり形骸化してしまっている。一度業務を実施し、5年後、10年後の、次の実施計画や総合計画で修正することを、普通はPDCAとは呼ばない。頻繁で、スピーディな改善を意図した手法だからである。そして、その必要性は現在も変わらない。
だが、自治体でPDCAサイクルを回すのは意外と難しい。業務単位が分割されており、ひとつの課を単位にしてみても、そのなかで横断的かつ共通の評価尺度がない場合も少なくない。また3~5年程度で職員の異動も頻繁に行われるため、個々人は既存業務に習熟することに手一杯になりがちである。最近は人員削減の圧力も強く、人を増やすのも難しい。
自治体業務でPDCAサイクルを回していくためには、職員個々人の力量に依存しない、つまり人が変わっても持続可能な仕組みづくりが必要である。具体的には要綱や要領への落としこみが必要だが、それらもあまり行われてこなかった。事業仕分けや事業評価も、ある一時点におけるスタティックなものであって、時系列での連続性は十分には確保されていないし、個々の事業の具体的な改善策の提案には至らないことが大半である。そして評価委員の顔ぶれも数年で変わってしまう。このように、自治体も、また評価する側も、PDCA実現のインセンティブに乏しかった。
だが地方創生によって、自治体の新事業が質量共に増加している。これを、現状のようにまともな評価と改善のスキームを持たないまま野放図に事業を増やしていくと、将来世代に大きなツケが返ってくることになりかねない。自治体事業をきちんと評価し、その質を高めていくためにも、改めて自治体PDCAの再検討と具体化のための仕組みづくりが求められているのではないか。

2015年5月10日日曜日

千葉市美術館「開館20周年記念 ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画 ―「マネジメントの父」が愛した日本の美―」

先日酷評した千葉市美術館だが、「開館20周年記念 ドラッカー・コレクション 珠玉の水墨画 ―「マネジメントの父」が愛した日本の美―」という企画を5月19日からやるらしい。 いうまでもなく、ドラッカーが日本企業や日本文化に関心を持っていたことはよく知られている。だが、水墨画にまで関心を持っていたことは知らなかった。期待したい。

2015年5月7日木曜日

愛車の三菱ギャランフォルティススポーツバックラリーアート。外見は、『頭文字D』のライバルでもおなじみランエボ風。あまり見かけないはず。そもそも三菱車自体、最近ではアウトランダーとデリカ以外、あまり見かけなくなった。ランエボの300馬力には劣るし、ツインスクロールターボでもない。とはいえ、245馬力の四駆ターボなので、ライトなクルマ好き、つまりサーフィンの移動にクルマは欠かせず、どうせ乗るなら移動時間の短縮という意味でも合理的だし、そこそこ速いクルマのほうがよいという程度の認識のぼくにはぴったりだ。四駆なので、ビーチまで乗り入れても、スタックの心配も少ない。静かすぎず、うるさすぎず、エンジンをかけただけで、もりもりとテンションがあがってきて、気分が切り替わる。こういうのは、前のSaab9-3では感じられなかった。Saabはとても上品な、しかしそこそこ速いクルマだった。それに対して、このクルマは、日本の、というか首都圏の道路の速度域だとどこで踏んでも十分トルクフルで、ぼくなんかだとむしろパワーを引き出しきれていない感が残ってしまう。上品とはいえず、むしろやんちゃな、しかし年長者が好きなクルマかもしれない。スポーツモードにしようものなら、ちょっとした外車よりも断然速い。その代償として、低速走行でも、高速走行でも一切燃費は期待できない。ところでゴールデンウィーク期間中、緊急事態が2度も勃発して、その対応でまったく息をつくヒマもなかった。昨晩は夜更けに短い原稿も送った。早朝から千葉で波乗り。空いてたし、なかなかいい波だった。漫然と休むより、運転して、サーフィンするほうがよっぽど休んだ感じがする。これから夜まで、複数の打ち合わせを含む仕事。ゴールデンウィークでまともに休んだのは今日の午前中だけだったが、渋滞にもあわず、海も空いてた。なかなか良い休暇だったかもしれない。

2015年5月4日月曜日

伝統的なマスメディアから開放された視聴者が向かう先は、文法、様式、強い忠誠心を共有する「超マス」か。

4月の25日、26日に、ニコニコ超会議が開催された。いわずとしれた、ニコニコ動画を擁するドワンゴが提供するオフラインとオンラインを横断したイベントで、今回が4回目の開催になる。
【速報】“ニコニコ超会議2015”会場総来場者数は15万1115人! “超会議2016”&“町会議2015”も開催決定- ファミ通.com
すでに上記のような速報が出ているように、15万1115人を動員し、大成功だったようだ。以前から超会議の存在は知っていたが、あらゆる行列と人が密集している空間が苦手なので、あまり足が向かなかった。ところが、今年、ドワンゴはプロモーションの一環として、ブロガーらにもチケットを相当配っていたようである。その一環として、知己の担当者からプレスチケットを手配してもらえたので、また並行してニワンゴの杉本誠司社長が招待券を送って下さっていたこともあって、さすがにネットやメディアを論じる身としてはそろそろ行く他あるまいということで、はじめて足を運んでみた。いや、だいぶお膳立てしていただいてやっとなので、足を運ばせていただいたというのが正解かもしれない。
…とはいえ、「幕張メッセ遠いなあ」などと思っていたら、着くのが随分遅くなってしまい、14時頃だった。ときどき、千葉みなと駅まで通勤しているので、距離感はわかっているはずだったのだが、出遅れてしまった。2日目は、17時までなので到着する前に終わってしまうのではないかと焦ったが、まだまだ海浜幕張の駅から会場まで十分な人の列が続いていた。
ニコニコ超会議2015入り口看板
ニコニコ超会議2015入り口看板
なんでも後から聞いたところでは、入場まで随分時間がかかるらしく、ある意味ではこのくらいの時間の到着でよかったかもしれない。写真がボケているのは、タブレットとスマホで撮っていたからなので、ご容赦のほどを。会場は大変な人だった。取り敢えず勝手によくわからないので、会場の端から端まで、3、4往復したのちに、別会場で自衛隊等々の展示を見るというコースを辿った。
まず向かってみたのは、業界的に馴染みの深い(?)言論ブースだった。そこでは田原総一朗氏が司会になって香山リカ氏や池田信夫氏らが憲法談義を交わしていた。何というか、往年の活況を呈していた頃の朝ナマの熱気を再現したような雰囲気だった。その後ネットでは既に話題になったが、大塚英志氏が途中で退席して、奇しくもテッパンの朝ナマ名物が再現され、おおいに盛り上がったようだ。
田原総一朗氏が「ニコニコ超会議」で激怒 大塚英志氏が途中退席する事態
相撲、(オンライン&アナログ)ゲーム実況、「踊ってみた」、ライブ、将棋、プロレス、コンテンツはなんでもありである。「日本の若者は元気がない」などといわれるが、とりあえず、この会場については余計なお世話というほかないだろう。会場の年齢層は、日本の人口構成に対して、圧倒的に若い。10代~40代くらいが中心だった。従来の意味での「オタク」という狭い参加者ではなく、実に多岐にわたっている。カップルや仲間での参加も多い。10名程度の大集団や親子連れもいた。加えて、それぞれのイベントは、ネットの先にも視聴者がいるわけだから、凄まじい規模と熱気である。以下は、ざっと印象に残ったものを紹介したい。政治と社会に偏っているのは、仕事柄、仕方ないということでご容赦いただきたい。
警察ブース
警察ブース
警察もマスコットや、警察車用を持ち込んで大きくブースを展開していた。自衛隊などと同様、リクルーティングや若者への認知拡大をミッションとしているものと思われる。多くの人が集まっていた。
民主党ブース
民主党ブース
これまで何かと物議を醸していた政党だが、今回出展していたのは民主党だけだった。「人がいない」とツイートしていたら、Facebookに、民主くんの中の人から「いや、人はいた。印象操作ですか」とコメントをもらった。真実は知らない。取り敢えず、今のところ講演を除くと政治の仕事はしていないので、民主党にネガティブな印象操作するインセンティブはとくにない。過去のぼくの立場からすれば、むしろ頑張れ、というほうじゃないかと思うが・・・
自衛隊ブース
自衛隊ブース
今回も、高射砲やミサイルを持ち込み、陸海空すべての自衛隊がブースを出していた。また説明の人も多数貼り付けていて、大変な規模だった。完全にリクルーティングと認知拡大がミッションと思われるが、説明の担当者も、こういうイベントを好きな人を探してあてているのか、どことなく楽しそうな様子だった(これは警察ブースも同様だった)。確かに、地廻りのリクルーティングよりも、こういうイベントで自衛隊に親しんでもらったほうが、これからのリクルーティングには効きそうだ。
自衛隊ブース
自衛隊ブース
こちらは、自衛隊のパネル展示。
在日米陸軍ブース
在日米陸軍ブース
在日米陸軍も出展していた。規模は小さく、自衛隊ブースと隣り合っていて、おまけみたいな感じだった。
パトレイバー(実物大?)
パトレイバー(実物大?)
パトレイバー世代なので、なかなか見応えあるサイズだった。
このほかに、ニコニコ学会βもチラっと観たが、完全に写真を撮り損ねていた・・・
しかし、ニコニコ超会議にはじめて足を運んで感じたのは、それなりに、日本のネットの登場とともに慣れ親しんできたし、ネットでも仕事をしてきたと思うのだけれど、この新しいムーブメントにはついていけていないということだった。30代になって、だんだんスポーツ選手の年齢が自分より下になり、タレントの顔と名前が一致しなくなり、アイドルがすべて同じように見える現象と似ている。どうやら、Web2.0とソーシャルメディアあたりまでが、筆者が主観的に楽しむことができた「ネット」なのかもしれない。LINEもイマイチ肌にあわないので、家庭内連絡網と化している(その点、このYahoo!ニュース個人は、基本ルールが「古き良きブログ」で助かる)。
それほどに、幕張メッセというリアルな空間を、独特の文法、様式、そしてプラットフォームであるニコニコ動画的なものへの強い、しかし潜在的な忠誠心が覆い尽くしていた。考えてみれば、これはなかなか不思議なことである。各自が享受しているコンテンツは、バラバラであるにもかかわらず、この空間には明らかに共通点がある。うまく言語化できないが、盛り上がっているブースについて気づいた点を、取り敢えず3点並べてみると、次のようになるだろうか。
・ネットと現地の双方に、ちょっとした「参加感」があること
・共有できる「突っ込みどころ」が残されていること
・「定番もの」が各所で見られること
むろん、これらはあくまで、何の体系的な観察ではない。ぱっと、見渡して気づいた点というものだ。とはいえ、なかなか興味深かった。これまで、ネットメディアは、マスメディアと対立的な図式で語られることが多かった。つまり、マスメディアを介して(とくに日本のメディア環境においては)、数十万人~数百万人単位の人が同時にひとつのコンテンツを消費していた。それに対して、ネットメディアの時代になると、もっと個人的な消費や、コンテンツ体験は個人的なものになるように思われていた。
ところが、ニコニコ超会議が見せるネットメディアの未来像は少し違う。リアルタイムであろうがなかろうが、大規模で、消費の対象こそ変われど、共通のプラットフォームを用いることで、個々人はあまり意識することなく、あるいは過剰に意識しながら、両者が表裏一体となて、超大規模な「マス」になっている。このマスは忠誠心も高い。オンラインにとどまらず、お金を払って、この、なかなか快適とは言い難い会場にまで足を運び、没入体験に興じるのだから。
そういえば、この辺りは、EDMのミュージックビデオに感じる印象と似ているかもしれない。伝統的なハウスやテクノは、ライブのみならず、アルバムで聴いても結構楽しめる。それに対して、EDMはどこか違和がある。YouTubeで1時間位ある公式ライブを流しているのが一番しっくり来る。このビデオも積極的に、楽しんでいるオーディエンスを撮影する。そしてEDMのアーティストは、もはやアルバム作成に対しては積極的ではなく、シングルをたくさんリリースしている。ビジネスモデルの変化なのかもしれない。ニコニコ超会議的なものの本質と関係があるかもしれないし、ないのかもしれない(下は、最近良く聴いてるMartin Garrixのライブ)。

伝統的なマスメディアから開放された視聴者が向かう先は、どこか。文法、様式、強い忠誠心を共有する「超マス」か、それともまた別のあり方なのか。何か新しい説明図式が必要なのかもしれないし、それとも従来のメディア論で説明できるものなのかもしれない。考えてみるとなかなか楽しい。このような観察や思考を楽しんでいる時点で、もはやこの場にはふさわしくないかもしれないとも思ったが、先日81歳を迎えられた田原総一朗氏が、言論ブースでは主役を張っていた。まだまだ諦めたり、背を向けるのは早いだろう。いずれにせよ好奇心と思考を刺激される、良い機会だった。

2015年5月3日日曜日

千葉市美術館は展示に解説をつけたら良いのではないか


千葉市立美術館が所蔵名品展をやっている。そのことを教えてもらったので、今仕事もしている、千葉市について理解を深めるために、仕事が終わってから、業務時間外にプライベートで見に行ってきた。建物もよくドラマの撮影に使われるような大変趣き深い場所ではあった。200円と入館料もリーズナブル。展示も葛飾北斎から現代アート的なものまで多岐にわたる。

…だが、解説が一切ない。展示の順番とその意味もよく分からない。100選とそれ以外がシールで分けられていたので、すべてが有名なものというわけでもないような気がする。だが、解説がないので、展示について、あるいは美術の知識がないと、楽しみ方がよく分からない。教養がない、と言ってしまえばそれまでだが、なかなか難しい。少なくとも、ぼくはあまり楽しめなかった。文脈やどれを見るべきかもよくわからなかったので、ざーっと眺めて30分ほどで出た。

千葉市は緊縮財政を実施していることになっているから、いろいろとお金をかけるのが難しかったのかもしれない。だが、簡単な解説をつけたり、撮影やシェアを認めてもよいのかもしれない。仮にお金をかけないとしても、もっと間口を広くできるのではないかと思った。

千葉市美術館
http://www.ccma-net.jp/

Fast & Furious 7 R.I.P. Paul Walker



先日映画館で観た。シリーズ通して好きなのだけど、まあシリーズがヒットするにつれて、制作費や登場陣含め、規模を大きくしてきたシリーズといえる。

ストーリーも、ネタバレにならないように抽象化すると、カリフォルニアの車好きのクソガキたちが、世界中相手に暴れまわって、最後には成熟して、離れ離れになるけど、それでもファミリーであることを確認するという、ある種のアメリカン・ドリームで監督、俳優、音楽アーティスト陣含め、Fast Furious製作陣の成功譚と重なる(Frious 7の監督はジャスティン・リンではなかったけれども・・・)。

あと、俳優のポール・ウォーカーが、収録直前に、自動車事故で亡くなっている。シリーズを追ってきた人はおそらくそのことを知っていて、下記のWiz Khalifaのテーマ曲含め、全編R.I.P. Paul Walkerにあふれている。

Furious7 でも、中盤ポール・ウォーカーは、やっぱりインプレッサWRX STIで出てくる。自身も、日本車コレクターだったらしい。現行のインプレッサには設定が無いので(独立して別ブランドになった)、2000年代半ば頃のものだが、こういう細部も見所だった。



『ワイルド・スピード』公式サイト
http://wildspeed-official.jp/

2015年5月2日土曜日

2015年5月2日付け読売新聞朝刊「国民投票 試金石に」記事コメントについて

今朝方早朝に、知り合いのF記者から、確認をもとめる文面がショートメッセージで送られて来ていた。たいてい気がつくのだけど、Androidが壊れていて、調子が悪いので、気が付かなかった。急ぎだったのだろうが、そもそもコメントしたときは、いつ使うという言及のないものだった。勝手にコメントをまとめて使うのは、仁義にもとるというほかない。

こういう使われ方を放置しておくというのは、「いつでも、いい塩梅で都合よく、コメントまとめて使っても大丈夫な人」という誤った認識を持たれかねない。またやはり一般的な意味では年齢が若いので、百戦錬磨の新聞記者や、雑誌記者には、昔から甘く見られがちでもある。よく知っている。しかし、残念ながらというべきか、すでに十分コメント等使われてきた現在となっては、今さらコメントを新聞に取り上げられて嬉しいというわけでもない。担当記者にはメールしたので、明日までにまともな返事がなかったら、政治部とカスタマーセンターに連絡しよう。泣き寝入りはしない。取り敢えず、現時点のまとめ。

2015年4月30日朝日新聞論壇時評で高橋源一郎氏に言及いただきました。



2015年4月30日の朝日新聞論壇時評で、高橋源一郎氏に言及頂きました。また、津田大介さんの「今月の3本」に、ヤフーニュース個人のエントリを選出いただきました。物書きの端くれとして、こういうのはとても嬉しいですね。しかしYahoo!ニュース個人(これはもしかしてはじめてのケースではないか)や、ポリタスが普通に論壇時評で取り上げられるというのは、ネットが当たり前の時代に仕事をはじめたぼくらとしては嬉しい一方で、「論壇」とはいったいなんだろうか、というすでに手垢のついた問いが再び浮かんできます。

(論壇時評)ことばを贈る 根本から考えるために 作家・高橋源一郎 - 朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/articles/DA3S11731471.html

「西田亮介〈5〉は、今回の統一地方選が、無風どころか「無音」だったことで「主権者教育や市民制教育」が改めて注目されているが、そもそも、「政治を理解し、判断するための総合的な『道具立て』」がないのではないか、と書いた。その上で、戦後すぐ当時の文部省が用いた『民主主義』という(中学・高校)教科書〈6〉に触れ、この膨大で、熱気に溢(あふ)れた教科書のようなものこそ必要ではないか、としている。 西田に触発され、わたしは、『民主主義』を読み、圧倒された。これは、教科書以上のものであり、また「論」以上のものであるように感じたからだ。 「民主主義を単なる政治のやり方だと思うのは、まちがいである。民主主義の根本は、もっと深いところにある。それは、みんなの心の中にある。すべての人間を個人として尊厳な価値を持つものとして取り扱おうとする心、それが民主主義の根本精神である」(はしがき) その「根本精神」から始まり、およそ社会と歴史のすべてを、その精神から考えようとした労作の書き手を、効率を最優先と考えるいまの社会は、もしかしたら、「危険思想」の持ち主と見なすかもしれない。」(上記、朝日新聞デジタルより引用)

※当該エントリ
「無音」の統一地方選、早急に政治と民主主義を理解するための「道具立て」の導入を(西田亮介)
http://politas.jp/features/5/article/369

社会に政治を理解し、判断するための総合的な「道具立て」を提供せよ――文部省『民主主義』を読んで - Y!ニュース
http://bylines.news.yahoo.co.jp/ryosukenishida/20150405-00044539/