筑波大学の附属図書館(以下、「筑波大学大学図書館」)が資料購入費のクラウドファンディングを始めている。
資料費減少で危機。大学図書館に本を購入し若者に十分な学ぶ場をは、あと63日で、約227人からの協力がないと支援が届きません。ひとりでも多くの方に広めてください!- Readyfor
筑波大学大学図書館のクラウドファンディングへの挑戦は、すべての国立大学法人が直面している、継続的な運営費交付金の減額に伴う経営苦のもとでの新しい試みである。いうまでもなく注目し、応援したい。
しかし、それとは別に、筑波大学といえば、RU11(学術研究懇談会)という主要研究大学で構成されたグループにも属しており日本を代表する研究大学のひとつだが、その大学でさえこれほどの苦境に立たされていることに改めて愕然とせざるをえない。
その原因は、年間約1%という数字を掲げて進められてきた、国立大学法人の数少ない安定的財源である運営費交付金のほぼ一貫した減額政策にある。それらの問題については、これまでも幾つか紹介してきたが、競争的資金の増加や産官学連携の強化で補えるものではなかったし、少なくとも減額の速度が早すぎる。
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人件費や建物の老朽化対策といった大型の固定費を無視しているし、国立大学の収入構造がさまざまな規制で相当に限定的である現実も同様に無視されている。たとえば標準額の範囲を越えた学費(授業料)値上げは各大学では決定できないし、そうすべきでもないだろう。事実、大半の国立大学の授業料は標準額に留め置かれている。こうした状況のもとで、すでに少なくない国立大学の経営に相当な影響が出ている。
今回の筑波大学大学図書館の事例も、こうした苦境のなかでの挑戦だ。それ自体は素晴らしいが、大学図書館の性質上、図書の購入が半永久的に求められることを鑑みると、クラウドファンディングという一過的な手段で賄うものではなく、本来は恒常的かつ十分な水準の予算措置が不可欠に思われる。さまざまな現行の政策を見ても、大学への要求水準は高まっているし、社会的なリクエストも増加している。大学自体の(国際的)競争力を向上せよという社会的風潮もある。その一方で大学への国と社会の投資はまったく追いついていない。運営費交付金の大幅な増額は確かに難しいだろうが、かといってこのまま減額が続けられるようだと日本の高等教育と研究基盤はますます不安定なものになっていくだろう。今回の筑波大学大学図書館の事例を通じて、その背後の文脈と構造にも目を向け、いま国立大学が直面している事態の深刻さが少しでも知られるきっかけになってほしい。