今回のテーマは模擬選挙。タイムリーなテーマです。
※ただし、選挙期間中に模擬選挙をやったみたいですが、公職選挙法の特定政党の支持にかからないように、政党名を伏せてマニフェストを見ながらやっていたようです。そこまでの行き届いた配慮にも驚きました
模擬投票の結果(具体的なプロセスが書かれている政党や若年世代向けの政策が多い政党、消費税増税反対を掲げる政党などが支持を受けている)と実際の比例区の結果を見比べながら、「なぜ、そういった違いがでるのか」「投票年齢は下げるべき/あげるべき?」「投票年齢を下げることにはどのような意味があるのか」について、議論をしました。
ぼくからはそもそも民法の成年規定が明治時代にできたものであること、「おとな」概念が事実性に基づくものであり、かつ制度もまた多くの事実性に基づいて形成されていること、「おとな」は政治に関心を持ち、また知識をもって投票しているだろうかということ、制限選挙/自由選挙、投票率の高低と民主主義、団塊世代と現役世代の出生数の違いと投票の合理性等々について、結論誘導にならないように注意しつつ話題提供しました。
もっとも印象深かったのは、挙手して意見をいう生徒が多数いること、またあてられた生徒たちも必ず自分の意見をいうことです。正直、大学でもなかなか見ることができない光景です。しかもやや語弊がありますが、多様な生徒が集まる公立中学校で、こうした光景を目にすることができことには驚きを禁じえません。
多くの学校関係者や卒論/修論を書いている大学生、討議型世論調査と意見変容の研究をしている政治学の研究室の人たち、これからやはり民間人校長になるという方、そして保護者の方々など多くの方が見学にいらっしゃってました。
授業終了後には、そうした方々も交えて30分ほど質疑応答がありました。そこでの代田校長のお話が興味深かったので、そのなかから特に興味深かったものをメモがてら共有しておきます。45分×2コマという短い時間でしたが、ぼくにとってもとても学びがおおく、また教育に対して希望が沸く時間でした。
- 公立高校はスタッフが流動的なので、仕組み化が重要。
- テーマ設定は年度計画で詳細に行なっている。今年度はいのちのこと、震災のことなども盛り込みながら計画を立てている。いのちの話は13歳、14歳の生徒の関心が高い。
- これだけ視察がきて、知名度があがってもよのなか科が増えないのは、よのなか科で何が身につくのかを定量的に把握しにくいという点がある。いま、大学と定量的な把握を試みているところ。
- よのなか科も含めて、和田中学校の取り組みはまねできないこともないが、「好循環」が効いているところもあって、最初の初動は大変かもしれない。横展開が今後の課題。
- おそらくよのなか科で身につく力は、OECDでいう、21世紀型スキルの項目、コラボレーション、協働的創出力があがる。日本の文科省には項目がない。
- ディベートではなく、ビジネスでも必要な「折り合いをつける力」を身に着けて欲しい。
- ICTの導入は合理性と効率化にものすごく効く。集計や他人が何を考えているかを一瞬で共有することができる(和田中ではiPadと富士通が開発したシステムを用いて、朝脳トレを行ったり、よのなか科でも小グループの意見集約と共有をiPadとPCで行なっている)。
- 学力向上はやはり授業が中心。1000コマある先生の通常の授業。先生の負担をいかに減らせるかという視点。部活もプロに頼めばいい(部活イノベーション)。研修や雑用を減らし授業に集中できる環境を作っている。
- どの授業のあとにも、内容や意見を短くまとめる訓練を行なっている。何かやったら、必ず提出させてチェックしている。校長がよのなか科のコメントを自分でチェックするのは、教師に背中を見てもらうため。生徒の成長が見えるので、3年生になるころには各自の考え方の傾向まで頭に入ってくる。論述を読むのは大変だが、メリットも大きい。