しかし、ここで紹介したのは、都知事選のネット選挙ではない。民主党の2014年党大会におけるネット活用である。民主党は、福島県郡山市で、2014年の党大会を行っている。その党大会で、桜井充民主党政策調査会長がツイキャスとTwitterでQ&Aを行う企画に取り組んでいた。民主党としては、新しい企画だったようだ。
以前、フォローしてた民主党のマスコット「民主くん」のアカウントが呟いていたのを目にしていた。
拡散希望!民主党2014年度定期大会で、Twitterとライブ動画によるQ&Aセッションを開催。2月8日(土)20時15分から30分。質問や意見に櫻井政調会長など党議員がお答えします。ツイキャス:http://t.co/RcQNcAkD4u ハッシュタグは #民主党大会2014
— 民主くん (@minshu_kun) 2014, 2月 7
そこで、事前に以下の3つ+あとから2つの質問をハッシュタグ「 #民主党大会2014」で入れておいた。
民主党は、みなさんの政権運営の是非について具体的に総括して、次のビジョンの実現過程を、具体的に提示いただけると共感できると思いますが、どうお考えですか? #民主党大会2014
— 西田亮介/Ryosuke Nishida (@Ryosuke_Nishida) 2014, 2月 8
また、抵抗野党とおっしゃってますが、むしろ現在の与党とは異なるビジョンと、実現過程を具体的に提案いただく提案型野党のような可能性はないのでしょうか? #民主党大会2014
— 西田亮介/Ryosuke Nishida (@Ryosuke_Nishida) 2014, 2月 8
さらに、民主党政権の重要な成果と思われる寄付税制改正等の「新しい公共」について、最近民主党から聞こえてこない気がしますが、具体的な提案等あればお伺いしたいです。 #民主党大会2014
— 西田亮介/Ryosuke Nishida (@Ryosuke_Nishida) 2014, 2月 8
司会は、民主くんのなかの人なのでしょうか(ソフトな質問) #民主党大会2014
— 西田亮介/Ryosuke Nishida (@Ryosuke_Nishida) 2014, 2月 8
その問題の整理を具体的に聞きたいです。公開を楽しみにしています。 #民主党大会2014
— 西田亮介/Ryosuke Nishida (@Ryosuke_Nishida) 2014, 2月 8
結論からいうと、司会の人がいの一番に拾って、確かに櫻井民主党政策調査会会長に振って、回答を行ってくれた。
.@Ryosuke_Nishida 「提案はしているが、なかなかマスコミで取り上げてくれないという苦労がある。政策を作るとともに広報戦略にも力を入れていきたい。」
— 民主党大会2014 (@dpj2014) 2014, 2月 8
.@Ryosuke_Nishida さんからの質問にお答えします。 http://t.co/12UmHHs8nz #民主党大会2014
— 民主党大会2014 (@dpj2014) 2014, 2月 8
民主党はじめての試みだったわけだから、まずは実現にこぎつけた「なかの人」に敬意を表したい。だいたい日本的な組織と、ネットの取り組みの相性は良くない。大学、自治体、マスコミはそうだった。民主党は、かつて2000年代を通してネット選挙解禁を強く主張していたとはいえ、おそらく政党も同様だろう。いろいろと不幸も重なった。まず8日の20時15分という開始時刻は、ちょうど都知事選の地上戦直後だ。最近の大型の選挙では、ネット選挙の一環として、ニコニコ動画等で「最後のお願い」を放送する(ネットでの選挙運動は、8日いっぱい可能)。政治に関心があるユーザーはそちらを見ていたのではないか。
ツイキャスは、時間が来ると切れるので、これは放送全体の視聴者数の延べ数ではないが、放送終了直後の視聴者数は同時視聴者数36人/計158人だった。野党の取り組みとはいえ、これはいささか寂しい数字だ。たとえば、選挙運動期間中に、2度ニコ生でネット選挙の解説をしたが、ともにのべ3万人近い視聴者だった。
見ている限りでは、いくつかの課題があった。ほぼマスコミ取材のような対応に終始していて、ネットならではの特性にフォーカスできていなかった。動画ではもう少し長くご回答いただいていたのだけれど、たとえば、ぼくの1つ目の質問と対応する回答を比較してもらうとすぐわかるが、ぼくの質問に直接回答していない。民主党の総括の有無について問うたけれど、民主党内部の要因ではなく外部要因について回答している(テキストにはないが、「動画では、党内の調整が難航している」旨の発言もあったはず。ちなみに3番目の質問への回答は、「スポーツ等への寄付のあり方を検討したい」という主旨だったはず)。ネットはマスへの回答でもあり、同時に個人への回答でもあるから、こういったズレへの反応は敏感だ。
加えて、タイミングの悪さもあり、残念ながら事前の盛り上がりに欠いた。ハッシュタグへ寄せられた質問が少なすぎた。政治についての関心が、明らかに都知事選という他所に向く日時は回避し、刺さる、換言すればユーザーが興味を持てるコンテンツを十分に企画すべきだった。
とはいえ、こうした試み自体は非常にユニークだから、「やっぱりネットはだめだ」ではなく、さらにネット対応して挑み続けてほしい。与党自民党は、相当なネットの対策をしているわけだから、(一応)最大野党の民主党はやはりコストが低く、新しい分野でもあるネットにはもっと注力してほしい。
とはいえ、有権者も、ネットにおける関心の一部を民主党に向けてみてもいいのかもしれない。先日ニコ生のユーザーアンケートで、ネット選挙が解禁されて自分が支持しない候補者について調べるか問うたところ、確か6割近い人が調べると回答していた(もちろん、十分に一般性のある調査などというつもりはない)。支持しない人も、民主党の見解をちらと見つつ、最近、野党が何を考えているのか、野党再生はありえるのか(あるいは、ありえないのか)、などを妄想してみてもよいのかもしれない。
なお、ぼく自身は、1)曲がりなりにも与党経験がある 2) 再編の約15年の歴史があるが、新しい野党再編とその合意にはまた同程度の時間がかかってしまうのではないかという懸念がある 3) 与党が緊張感を持った政権運営に挑むためにも、そこそこ強い野党が必要 という観点から、経済政策やエネルギー関連など政策的にはすべてに共感するわけではないものの、現在の政治を取り巻く情勢においては消極的民主党支持といえる。そういうわけで、昨日の「 #民主党大会2014」の周知に貢献してみようと、こうして夜中にぽちりぽちりとブログを更新してみた次第だ。また民主党は、ネットを使って、(知的に)面白いことをやってくれるだろうか。楽しみにしている。