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2015年4月17日金曜日

NHKとテレビ朝日の聴取は、歴史的に見ても、業界自粛を促す、政治からの効果的なアプローチ

自民党が4月17日に、NHKとテレビ朝日の幹部の聴取を行うことが話題になっている。
自民の放送局聴取が波紋=野党「番組干渉は違法」(時事通信)- Yahoo!ニュース
確かに、政治とメディアは、原理的には、それぞれ自立し、緊張関係にあるべきだが、そもそも日本のメディアはそもそも日常的にそのような状態にあるとはいえない。つまり政治との緊密な関係性(例えば記者クラブ、番記者制等々)のなかで報道を行っている。また野党による「番組の干渉は違法」という繰り返されてきた主張と見出しが目立つが、番組制作に対する干渉は違法であるものの、聴取として実行される以上、クロに限りなく近いものの、法的にはグレーゾーンの範囲内に収まってしまう可能性が高い。
民主党もNHKの聴取を行ったりしているので、与野党の違いによる影響力の差は考慮すべきであると同時に、その主張の形式が一般に説得力を持つようにも思えない。少なくとも、世論の強い関心を惹起するには至らないだろう。
NHK「やらせ」問題 民主党、NHKから聞き取り調査(フジテレビ系(FNN))- Yahoo!ニュース
このあたりは、統一地方選直前の政治とカネの問題なども思い出してほしい。結局、民主党の側からも似たような案件が出てきて、うやむやになってしまった。
他方、なぜNHKとテレビ朝日かという点を考えてみると、改めて現政権のメディア戦略が際立って興味深い。NHKは放送法が定める公共放送を担う特殊法人で、政治的に公平中立であることが求められるものの、概ねリベラルな立ち位置であった。そのことで、とくに2000年代になってから、幾度も政治との軋轢を引き起こしている。政治と揉め事を起こしたくないのが本音だろう。
テレビ朝日の場合、「報道ステーション」の、個人的にはあまりにしょうもないとも思えるコメンテータの発言が、今回の出来事の引き金になっているが、約20年前の1993年に、テレビ朝日はより深刻な政治との軋轢を起こした経験がある。通称として、個人名が事件名になっているので直接言及することは差し控えるが、当時のテレビ朝日の取締役が政権交代にメディアも貢献したとも捉えかねない発言をしたことが政治的に大きく問題視された。その記憶がある当時30代~40代の中堅だった人々が、現在も中枢を担っている。そのことを鑑みても、萎縮効果を引き出すことが期待できる。現在の「政治のメディア戦略」が、「メディアの政治戦略」よりも一枚上手であることを物語っているともいえよう。
こうした萎縮効果を肯定しているわけではない。ここで指摘したいのは、こうした「圧力」に対して、紋切り型の「違法だ」といった反応をしたところで、実質的には対抗できず、「政治のメディア戦略」が機能してしまいかねないという点である。倫理面を考えるとグレーだが、かろうじて合法の範囲内で、戦略と戦術を競うのは政治の常道でもある。
各メディアは騒ぐよりも、カウンターの、つまり「メディアの政治戦略」の知恵を絞るべきではないか。政治との緊密的な関係のなかで比較的均質かつ特オチを恐れる文化で発展してきた日本メディアは、そのような経験が乏しいこともまた事実だが、海外メディアに目を向けてみると、イギリスにおけるBBC vs サッチャーなどのように、幾度も政治との緊張関係を経験している(そして、ときにメディアが負けているケースもあることを想起したい)。
現政権は保守系メディアに情報を先出ししたりと戦略的になっている。といっても、拙著などでも指摘したように、2000年代以後の、緩やかな政治の、正確には自民党のメディア戦略の変化でもあった。メディアも、これまでとは違った対抗戦略を形成していかない限り、権力監視の役割を果たすことができなくなってしまいかねない。
政治に緊張関係をもたらす(そして、願わくば提案的な)存在であるはずの野党が、現状、数でまったく対抗できずにいる。そのような、現在の政治環境のなかで、本来メディアと、そしてジャーナリズムは、「第四の権力」として民意を反映しながら、政治に緊張感を生み出す可能性を持った、希少な存在である。従来のメディアと政治の緊張時において、紋切り型で脊髄反射的な反応に終止するのみならず、実践的な「メディアの政治戦略」を構想し、実践すべき時期なのではないか。
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最後に、4月10日に発売された最新号の『Journalism』誌の特集「選挙報道はどう変わるべきか」に寄稿した拙稿「高度なデータ分析で「イメージ政治」を読み解き、政治に緊張感を取り戻せ」とも関係する内容であることを追記しておきたい。