・・・しかし、政策研究者が政策提言してはいけない、などということもあるはずがないだろう。それどころか繰り返し霞ヶ関外での政策提言の活性化の必要性がいわれる日本では政策研究者による政策提言はより真剣に考えられてもいいのではないか・・・このような問題意識をもとに、国際公共経済学会次世代研究部会では「次世代政策VOTE」という企画を始めることになった。
「次世代政策VOTE」とは、若手の政策研究者の政策提言スキルを磨くために取り組み始めた政策コンペ企画だ。現状のルールは以下のとおり。
- 10分で政策提言を実施、
- メインコメンテーター2名と10分で①革新性②実現性③将来性という3つの視点と質疑応答
- 全員の報告が終わったあとにフロアと質疑応答
- 投票
報告者によって対象分野も多様なので、ニッチな分野はその分野の重要性それ自体も主張しなければならない。
この企画を、国際公共経済学会が従来若手研究会として取り組んでいた春の大会を改組した春季大会@名古屋学院大学で実施させていただいたのだ。プログラムは下記のとおり。
1.『デジタルアーカイブのための著作権制度改革』
発表者:生貝 直人(東京藝術大学 総合芸術アーカイブセンター 特別研究員)
2.『政策過程へのPRとロビーイングの導入』
発表者:西田 亮介(立命館大学大学院 先端総合学術研究科 特別招聘准教授)
3.『住民参加型政策投票システム』
発表者:松原 真倫(慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科博士課程)
4.『人口政策としての移民のガバナンス』
発表者:山田 航(兵庫県立大学大学院経済学研究科 博士課程)
5.『次世代コンテンツ政策』
発表者:山口 翔(立命館大学グローバル・イノベーション研究機構 ポストドクトラルフェロー)
進行:深見 嘉明
コメンテータ:松原聡(東洋大学) 菊池 尚人(慶應義塾大学)
実施してみると、実にスリリングで、知的なエンターテイメント性を持った企画になった。10分というのは通常の学会報告よりもタイトで、松原先生、菊池先生という実際に政策過程に深くコミットされてきた先生方の厳しいコメントの質疑応答と、フロアの、必ずしも専門分野を同じくしない政策研究者とのやり取りを行わなければならないのだ。
緊張感ある厳しいやり取りが相次いだ。ぼくも報告したわけだが、10分のやり取りをとても長く感じ、厳しいプレッシャーに晒されることになった。また誰に、何票入ったかがその場でわかるので、極めてシビアな結果が出る。言うまでもなく、一般的な学会報告は重要だが、現実の政策に向き合う機会も少なくない政策研究者が腕を磨くためにこうした企画もあっても良い気がした。幸い学会でも好意的に受け止めていただき、今後、いただいたフィードバックなどをもとにして、さらに企画を充実させて、今後も継続的に取り組んでいくことになった。他分野との共催など、いろいろな応用可能性も見込めそうだ。またこうした知的なゲームをコンテンツにすれば、一般の人にも普段政策研究者がどのようなことを考えているのかを、比較的楽しみつつ理解できる機会にもなりえるのではないかとも思った。今後も新しい展開などあれば紹介していきたい。
※国際公共経済学会は、経済学を中心に、政治学、社会学など多様な観点から政策研究を行う社会科学の研究者が集っています。また次世代研究部会では、政策VOTEに加えて、夏にも合宿企画(西園寺会議?(仮))を予定するなど、若手中心の活動を行なっており、新入会員も募集しています。入会案内はこちらまでどうぞ。