西田研ホームページ(https://www.ryosukenishida.com/)に、主に進学希望者向けの新しいコンテンツを公開したので、こちらにも載せておきます。
西田研の研究生活(2018年11月5日ver.)
理系の大学にある文系研究室の西田亮介研究室。今回は研究室を主催する西田亮介先生と学生さんたちに西田研での研究生活をざっくばらんにインタビューしました。進学を考えている人はぜひ参考にしてみてください。
インタビュー実施日:2011年11月5日 西田研研究員K@西田研学生室
――――こんにちは、今日はよろしくお願いします。まずは、西田亮介研究室について西田先生から簡単なご紹介をお願いします。
西田亮介先生(以下、西田先生):
よろしくお願いします。西田研は僕が東京工業大学に着任した、いまからおよそ3年前の2015年に立ち上げた、社会学と公共政策学を研究する研究室です。
最初の年に、日本人の博士課程の学生1人と、留学生の修士課程2人、日本人学生1人の計4人がやって来て、それから段々と学生数が増えて現在に至ります。研究室には、メディア研究を中心に社会学を研究する学生や、日本や海外の政策を研究する学生たちがいます。
――――いまメディア研究や政策研究というキーワードが出ましたが、所属する学生さんたちの研究テーマにはどのようなものがありますか?
西田先生:
学生の研究テーマは多岐に渡ります。例えば、日本国内の地域を研究している博士課程の学生もいれば、広告代理店出身で自身の仕事とも関係するテーマを研究する社会人大学院生もいます。また、ある博士課程の学生は、トルコのソーシャルメディアと社会運動の研究をしようとしています。修士課程の学生は、現在中国からの留学生の比率が多いこともあって、中国のメディア事情やジャーナリズムの動向、それから政府の情報発信などについて研究しようとしている学生などもいます。ぼく自身がいろいろな対象を扱っていることもあって、様々なテーマを扱う学生が在籍する研究室だと思っています。
――――学生さんの研究テーマも様々ですが、バックグラウンドも多様ですね。西田研究室の学生さんの特徴みたいなものはありますか?
西田先生:
おそらく僕自身の過去の研究との兼ね合いだと思いますが、やはりメディア研究や情報技術と政治社会との関係に関心を持っている学生が多い印象です。
――――西田研究室の学生さんは、皆さんどういうスケジュールで研究をしていますか?
西田先生:
研究室の指導体制は「個人研究」と「ゼミ」の2つで構成されています。個人研究は修士課程・博士課程の学生がそれぞれの研究を進めていくというのが中心になっていて、ゼミは博士ゼミ、修士ゼミ、学部ゼミと3種類のゼミが置かれています。博士ゼミは英語で行われていて、ゼミ運営やスケジュール設定などもすべて博士課程の大学院生たちに委ねています。内容は、自身の研究進捗を発表したり、研究過程で読んでいる最新の文献などを他の学生と共有するといったものになります。
修士ゼミは、各自の研究進捗の報告はもちろん、研究の進め方や方法論等を含めた「研究をするとは何か」というところから実際に自分の研究を進められるところまでを各自がデザインできるようにするのが目的です。週1回のペースで開かれています。
学部ゼミは理工系の大学生たちが教養科目の一環として履修する学部科目です。僕が東工大という理工系の大学に文系の研究室を持っている理由でもあります。学部ゼミでは社会科学系の文献輪読を中心とした学習を行っています。
西田研究室の研究指導方針として、基本的に上の課程の学生が下の課程のゼミにも参加するというルールがあります。博士課程の学生は修士ゼミと学部ゼミにも参加し、修士課程の学生は学部ゼミにも参加するということです。もちろん、修士課程の学生が博士ゼミに出ることや、学部生が修士課程以上のゼミに出るのも任意で可能になっています。
これらの基本的なプログラムのほかに、年に1~2回の頻度で研究合宿も行っています。普段はなかなか読むことができない外国語文献や古典文献などを中心に、朝から晩まで集中的に勉強しつつ、同時に研究室内のコミュニケーションをより密なものにする機会として合宿は位置づけています。その他に企業見学などにいったり、ゲストレクチャーも実施しています。
――――ありがとうございます。次に、西田先生が自らの研究室に求めている学生像などありましたら教えてください。
西田先生:
そうですね……モチベーションが高くて、自分がやるべきことを自分で発見でき、周りの学生と助け合いながら各自のキャリアを切り開いていく、そんな学生が来てくれることを期待しています。
――――いま「キャリア」という言葉が出ました。西田先生が東工大に着任してから3年が経過されましたが、修士課程はそろそろ第一期生が修了して世の中に出ると思います。第一期生の学生さんたちの進路を差し支えなければ教えていただけますでしょうか?
西田先生:
修士の第一期生は2人いるのですが、2人とも日本の民間企業に就職する予定です。2人とも留学生なので、慣れない日本での就職活動を経て働き先が決まりよかったなと心から安心しています。その一方で、少し悪いことをしたと思っているのは、僕の研究室が新しい研究室で、いわゆる日本式の就職活動をする上で重要なOB・OG訪問の機会が乏しかったことです。まだ直接の先輩がいませんので。それから、現在の日本式の就職活動のやり方について、僕から2人にもう少し周知してあげられたのではとも後悔しています。ただ一期生を世の中に出せるということで、こういう状況はこれから段々と改善されていくんじゃないかとも考えています。
――――なるほど、今後の卒業生たちがどんな進路を選ぶのかも期待したいですね。さて、次に西田研究室を選んで研究することのメリット・デメリットなどがあれば教えて下さい。
西田先生:
大別すると利点は2つあるんじゃないかと思います。1つは新しい研究室なのと、僕自身がまだ駆け出しの研究者であることから、僕の「現役感」を持った指導を学生が受けられるのではないかということですね。それから僕自身が研究者の労働市場についてはそれなりにフレッシュな感覚を持っているので、特に博士課程の学生たちにとっては現実味のある指導というのが可能ではないかとも考えています。僕の研究室は、ある意味では「まだ何者でもない」新しい研究室であり、決して名門研究室というわけではありませんから、これから入ってくる学生たちと共に作り上げ、皆で成長して行く、そんな経験をすることができる柔軟な場所なんじゃないかと思います。
デメリットは、いま挙げた利点と完全に裏返しになります。何よりも実績がない、特に就職活動をする上で優遇されることは乏しいんじゃないかと思います。それから研究者を目指す場所という観点で見ると、やはり歴史のある名門研究室からはすでに数多くのOB・OGが研究者として日本や世界各国で働いていて、その人たちが様々な形で便宜を図ってくれるというのがあるでしょう。うちの研究室は、まだそういう研究室にはなっていないこともデメリットとして挙げられると思います。
――――今の発言をポジティブに捉えると、研究も進路も西田先生と一緒に新しく切り開きたいという学生さんたちにとってはいい環境ということですね(笑)。
西田先生
そうかもしれませんね(笑)。僕自身もほぼ毎日、研究室に顔を出して学生たちとよもやま話をしますし、場合によっては共同研究で僕自身も学生たちと一緒に徹夜をしながら何かを作ったりすることもあります。まだそういう無茶なこともできる年齢ですので、学生たちと一緒に研究をする、それから研究のみならず何らかのプロジェクトを推進する、そうした提案はいつでも大歓迎という状態であることは、研究室の強みの1つだと言えると思います。
――――多くの学生から進学したいという連絡を日々受けていると思うのですが、志願者のために進学する上で意識すべきことや大切なことなどありましたら教えて下さい。
西田先生
何よりもモチベーションを持って欲しいですね。知識や日本語の優劣よりも、高いモチベーションを持って研究やプロジェクトに取り組むことができるかどうかを評価したいと思っています。ですので、言い方を変えると、現時点での知識や言語能力よりもモチベーションの高さとその後の実際の伸び幅というものを評価するつもりです。
――――志願者が手続き面で気をつけることはありますか?
西田先生
東京工業大学は、修士課程の入学私見は年に1回、博士課程の進学は夏と冬の計2回用意されています。さらに研究生になりたい場合も年に2回出願を受け付けています。ただし、最近になって細かな出願時期が変更になったので注意をする必要があります。詳しくは大学のウェブサイトを参考にして下さい。
僕に事前に連絡を取りたい人は、履歴書、TOEICなど英語力を測るテストの点数、研究計画書、外国からの出願者はそこに日本語力を測るテストの点数という4点セットを送ってもらうことにしています。実際には多くの人が研究計画書を添付せずに書類を送ってくるので、そこも注意して欲しいと思います。連絡を取った時点から、選抜が始まっていると考えてください。
また西田研究室では、海外からの志願者のために英語のTwitterアカウントも開設していますので、それも進学する際に参考にして欲しいなと思います。
――――研究室の普段の雰囲気が気になる志願者の方もいらっしゃると思います。どのような感じか教えていただけますか?
西田先生:
締め切りなどで追い込まれると、博士課程・修士課程の学生を中心に研究室に宿泊したりする学生もいますが、普段は和気あいあいとした雰囲気です。特に学期期間中は多くの学生が研究室を中心とした生活を送っているようです。ただし、彼らが研究室でいつも議論をしているのか勉強をしているのか、はたまたYouTubeを見て遊んでいるのかは分かりません(笑)。研究室では、ときに理工系の学部生と文系の大学院生が一緒に何かプロジェクトを進めたり議論をしたりする光景も見られて、そういうのはとても素敵だなと思いながら眺めています。
――――これまでの3年間で、西田先生が特に印象に残っている出来事やエピソードなどはありますか?
西田先生:
やはり子育てと同じで、学生たちはなかなか教員の思う通りには育ってくれないものです。着任した当初は、僕も四苦八苦しながら手探りで指導を行ってきました。そのような中で、入学した当初は日常での日本語会話もおぼつかなかった留学生2人があっという間に日本語を習得して就活で内定を得る。修士論文もまだ提出前で完成には至っていませんが、ある程度形になってきた。修士2年の人たちのこの2年間というのは、僕にとっても、とっても印象的な2年でした。入学という入り口から卒業・就職までの出口までをきちんとデザインできたというのは、僕にとっても大変誇りに思うことができる経験でした。
――――西田研究室を志願する学生にお薦めの書籍はありますか?
西田先生
日本式の大学院受験では、面接するまでに指導(予定の)教員が書いた書籍を複数冊読んで来るというのが常識になっています。その意味で言うと、2016年に社会情報学会優秀文献賞をとった『メディアと自民党』(KADOKAWA、2015年)はひとまず僕の代表的な仕事として読んできて欲しいというのはあります。それから僕が政治や社会をどう見ているのかという点でいえば『なぜ政治はわかりにくいのか』(春秋社、2018年)と『不寛容の本質』(経済界、2017年)の2冊を上げることができると思います。やや毛色の違う業績で言えば『無業社会』(朝日新聞出版、2014年 ※工藤啓氏との共著)という認定NPO法人育て上げネットの代表である工藤啓さんと書いた著作も、僕の社会観や政治観と密接に結びついている書籍なのでお薦めです。『無業社会』は、おそらく日本語としてもいちばん読み易いんじゃないかと思います。
――――先ほどゼミで文献の輪読をしているというお話がありましたが、これまで具体的にどういった本を読んできましたか?
西田先生
これまではグローバル社会を考えるという観点から、2010年代前半までの、いわば理性と国際協調を基軸とする社会の理論的支柱となった社会民主主義の論者たちの著作を読んできました。具体的には、アンソニー・ギデンズやロバート・ライシュのような理論家や実践家たちの著作です。それらの著作を軸にしながら現代社会の基調である理性的な社会や世界とはどのようなもので、どのように形成されてきたのか、課題はどこにあるのかといった問題を検討しました。その他には、より現代的なテーマあるいは直接的な研究の方法論に関連する著作ですね。方法論としては『政治学の方法』(加藤淳子・境家史郎・山本健太郎編、有斐閣、2014年)や『イシューよりはじめよ』(安宅和人著、英治出版、2010年)などが該当すると思います。ただし、文献として何を読むかは、セメスターによって変わっていきます。
――――ありがとうございます。西田研の学生さんたちは修士課程に入学した後、どのようなペースで2年間の研究生活を送っていくかも教えて下さい。
西田先生
入学するとすぐに授業が始まって、多くの学生たちにとっては久々の授業経験になるので日々の課題やレポートに追われます。また、西田研究室の所属先である社会・人間科学コースには必修科目も設定されているので、特に入学後1年目はそうした授業に追われる生活を送ることになるでしょう。同時に、修士課程を経て企業などに就職したいという学生たちは、多くの場合1年目の当初から就職のための準備をしなければなりません。日本式の就職活動ということで言えば、SPIやTOEIC受験したりインターンに行ってみたり、そんな準備も最初の年から始まります。
ですので、最初の年に研究の大まかなかつ現実的なデザインを行って、その上でリサーチを進めていく。そして、修士課程2年の当初くらいから修士論文の執筆を開始すると良いペースで無理することなく修士論文を仕上げることできるのではないでしょうか。
――――ありがとうございます。西田研究室を志願する方には是非参考にしてもらいたいですね。さて、ここで実際に西田研究室の中で研究をしている学生さんたちにも話を伺ってみたいと思います。
金子さん(修士課程2年):
西田先生のゼミは、自分たちで本を読んできてプレゼンをし、その上で西田先生が学生の間違った理解や、欠けている視点を補う形で進んで行きます。学生と教員の間で密な関係ができているなと思うのがこのゼミの時間です。新たな知識や視点を得たり、西田先生の視点を学生側から批判的に見たりすることもできるとても良い機会だと思っています。
僕はいま東工大と中国の清華大学との大学院合同プログラムに参加していて、中国と日本を行き来しているんですが、西田先生も背中を押してくれました。留学や新しいプロジェクトみたいなものに対して寛容な先生の人柄は研究室の雰囲気にも表れているのかなと思います。部分だと思ってます。
西田先生:
悪く言えば、いい塩梅で、元気にしっかり研究やって、進路を決めてくれれば何でもいいんだけどもね(笑)
呉さん(修士課程1年):
西田研で1番いいところは、単に理論だけを学習するのではなくて、社会見学や実際に色々な……すみません、緊張しています(笑)
西田先生・学生
(爆笑)
呉さん:
笑わないで(笑)!日本人学生も中国からの留学生もみんないい雰囲気で毎日楽しく勉強して、楽しい生活を送っています。
盧さん(修士課程2年生):
呉さんも言ったように、理論を学ぶだけじゃなくて、社会見学などで社会の実際を知る機 会もバランスよく用意されているのは、自分たち留学生にとってはとても貴重な経験でした。日本の政治やメディアなど、中国人が分かるようで分からないものが、先生の授業やゼミで社会学的な知識を教えていただくことで「ああなるほど!」というように理解できる時もとても多いです。
もし、皆さんが西田研究室に来ていただければ、充実した悔いのない留学生活が絶対に送れると思います。
高松さん(博士課程2年):
西田研の1番いいところは学生の数が多いという点です。日本人学生のみならず留学生、特に中国からの留学生が多いということで、研究や「お勉強」の時間とはまた別に、多文化交流を積極的に行うことができるところが西田研のいいところだと思います。
これから来る留学生は、日本の大学院に来るということで心理的なハードルも高いと思うんですが、西田研はすでに留学生がたくさんいるので、先輩たちからたくさん日本の生活に関するアドバイスももらえると思います。日本人学生も留学生に対して積極的に学習面や生活面でのサポートやアドバイスを行っているので、そこは西田研の強みです。
西田先生:
今の高松君の発言に付け加えると、学生のサポートするために、西田研究室の体制として研究員1名、TA1名を用意しています。また留学生の皆さんの日本語力向上のために日常言語はなるべく日本語を使用するようなルール作りも行っています。
高松さん:
課外活動として留学生の皆と一緒に本格的な中国料理を食べに行ったり、逆に先生が日本式の居酒屋に連れて行ってくれたりと、積極的な異文化交流が行えるようないい研究室だと思います(笑)
金子さん:
せっかくの機会なので、僕からも西田先生に1つ質問していいですか?西田先生の修士や博士の頃の経験というのがすごく気になっていて、過去のインタビュー記事では、学部時代になんとなく留年をして、もともとはコンサルになりたかったのに修士課程に進学しちゃったという話を読んだんですが、そこからモチベーションが変化しただとか、あるいは研究に打ち込み始めたり、やっぱり自分が研究者に向いてるなって思うようになったエピソードとかがあれば紹介していただけると嬉しいです。
西田先生:
修士課程に入ったのは自分探しのためです(笑)。僕がそうするなと普段から皆に指導している通りのことを当時の僕は沢山やってしまっていたので、いま現在の皆への発言は反面教師の部分が多いですよ。残念ながら(笑)。
僕は学部と修士課程を同じ指導教員の先生に面倒を見てもらっていたんだけど、修士課程に入ったばかりの時はこれを機会に心を入れ替えて自分独自の研究を頑張ろうというのでは「まったくなく」、指導教員の先生がやっていたシミュレーションの研究を自分も後追いしようと思ったんですね。その先生が持っていた共同研究のプロジェクトに入れてもらって、日々パソコンと向き合いながらプログラミングをしたりデータの分析をしたりする修士生活を当日は送っていました。
同時に、平行して社会学者の宮台真司先生のゼミに学部2年生の終わり頃から出させてもらっていたので、そこで社会学について勉強もしていました。宮台真司のゼミで社会学を勉強して、それ以外の時は指導教員の先生のシミュレーション研究をする毎日でした。
段々とシミュレーションの研究が忙しくなってきたので、宮台先生のゼミからは足が遠のいていって、自分の所属していた研究科がある慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス中心の生活送るようになって行きました。当時の僕にモチベーションがあったかっていうと……どうかな(笑)。あまり主体的なモチベーションはなかったかもしれないけど結果的にいい経験にはなったかな。
当時はネットワークサイエンスという分野が世界的に注目をされていましたが、それらの最新の知見を学べたのは良かったと思います。定量的な分析の結果を基にして国際学会で報告して、世界的なコンピュータサイエンティストやネットワークサイエンスの分野を作った第一人者たちの講演を聞いたり、議論をしたりする機会に恵まれました。ただし、それをきっかけに僕は大きな挫折感を覚えます。「ああ、これは駄目だな」と。数学やコンピュータ科学の第一線の研究者たちと比べて、当時の僕程度の数学理解やプログラミング能力で戦っていっても将来に見込みがないなと思ったのです。
修士2年生くらいの頃にコンピュータを使ったネットワークサイエンスの研究をやめると指導教員の先生に申し出ます。そして、よりアナログな、当時自分が参加していたNPO法人の活動を研究にできないかということで、地域振興をおこなっているNPO法人の研究に取り掛かることにします。
当時流行っていた社会的な創造や、「creativeとはいかなるものか」という議論、長い間勉強していたドイツの社会学者ニクラス・ルーマンのシステム理論の考え方を使って書いたエッセイが、東浩紀さんが出していた『思想地図』という書籍の公募論文として採択されたのも同じ時期です。それがきっかけで、商業的な物書きとしての仕事を修士2年の半ば頃に始めます。当時は古市憲寿さんや開沼博さんもまだデビューしていなくて、日本の出版業界では若手の書き手が待望されていた時期でした。色々なメディアに物を書いたりという仕事を修士の頃に始め、その内容を発展させる形で修士論文を書き上げます。そして、その延長線上で博士課程に進学することも決めました。
僕が修士を卒業する頃には、若手がフリーの物書きとして、つまりフリーライターや批評家としてやっていくということが段々と流行り始めていました。僕も、ご多分にもれず流行にのっかって、そうなるのもいいかなと思ったわけです。しかし、既に何人かそういう人たちがいたんです。じゃあ、彼らと差別化するにはどうするべきかといった時に、博士の学位を持っているのもいいなと思うようになったわけですね。博士課程に進学して学位を取ればより専門性の高い物書きとして仕事をすることができるじゃないかと。そんなことを考えながら博士課程に進学することを決めました。このあたりはあまり世間で話していない話かもしれないな。
――――そうした経験を経て、いまの西田先生や研究室があるんですね。今回のインタビューの最後に、これから西田研を志望する学生さんたちへのメッセージをお願いします。
西田先生:
斬新な発想と高いモチベーションを持っている学生たちと新しい研究や新しいキャリアを模索できることを僕自身強く期待しています。それから学生たちから色々な提案を受け僕自身もまた変化していけることをいまから楽しみにしています。
やる気とモチベーションを持った学生さんであれば日本人・外国人問わず誰でも大歓迎です。社会人留学生も言うに及ばずですので、皆さんぜひ一度僕に連絡をしてみてください。
――――今日は、長時間に渡りお話をお聞かせいただきありがとうございました!
西田先生
こちらこそ、ありがとうございました。
おわり
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