2月27日に、民進党の辻元清美議員が提出していた「安倍昭恵内閣総理大臣夫人の活動に関する質問主意書」に対する答弁書が公開された。質問主意書とは、国会法第74条を根拠として、国会の会期中、国会議員が内閣に対して文書質問をすることが認められているが、その文書のことである。
質問主意書が提出された場合、内閣は質問主意書に対して回答しなければならないとやはり国会法で定められているため、3月7日に先の辻元議員の質問主意書に対する答弁書が閣議決定されたことを辻元議員は自身のホームページで公開した。
「安倍昭恵内閣総理大臣夫人の活動に関する質問主意書」に対する答弁書が閣議決定されました | 活動ブログ | 辻元清美WEB
一読すると、「~の意味するところが必ずしも明らかではないが」という表現が3度繰り返され、明確な回答を避ける傾向にあることが印象づけられる。なかでも、問題なのは、以下のくだりだろう。
辻元議員が、安倍総理夫人を補佐する公務員の(恐らくは)法的根拠を尋ねているのに対して、計5名の支援担当の職員がいるという状況を説明しているに過ぎない。確かに辻元議員の質問がよりクリアなものであればもっと深まったかもしれないが、質問の意図は概ね明白であり、答弁が質問とずれた回答をしているようにも読める。この点、以下の質問2への回答を読むと恐らくは法的根拠が明確ではないまま、慣習的になされてきたのではないかとも考えられるが、明確な回答がなされないためあまりはっきりとしない。
業務報告について具体的に問うた質問3と、回答も噛み合わない。業務報告の形態にも、またそれらがどのように、どのラインで報告されているのかについての回答もなされないままだからだ。
最近各種メディアも注目する総理夫人が公人かどうかを問うた質問もあったが、ここでは総理夫人による総理公務補助についてのみ回答されている。
なお、この件に関しては、弁護士の園田寿氏の解説が詳しい。結論を簡潔に先取りすると、園田氏は明確に公人とまではいえないが「公的人物」として評価すべきではないかと述べる。
内閣総理大臣夫人・安倍昭恵氏は「公人」なのか「私人」なのか(園田寿)- Y!ニュース
この点に関連して、昨年、筆者は、選挙の際には応援演説に入ったりもするので、実質的に政治的影響力を持つといえるのではないか、という主旨のことを書いた。
安倍昭恵さんとの「対談」と、その影響力、政治性について(西田亮介)- Y!ニュース
いずれにせよ、ここまでに紹介した幾つかの質問と回答の抜粋を読むだけでも、全体的に噛み合っておらず、日ごろの報道等を通じて「総理夫人」という曖昧な存在について感じる種々の疑問が払拭されたとはいえない。もし問題はないと胸を張るのであれば、これらの質問に対して、なぜもっと正面から回答しないのか理解に苦しむ。惜しむらくはもう少し質問が詰められたものであったならば、より明確に回答せざるをえなくなったかもしれないという点だが、さしあたりこれらの答弁が不誠実だとはいえそうだ。
ただしその後も、安倍昭恵氏に関する質問主意書が立て続けに出されている。本稿執筆時点で、逢坂誠二議員の「内閣総理大臣夫人の法的地位に関する質問主意書」と大西健介議員による「安倍昭恵内閣総理大臣夫人に関する質問主意書」が提出されていることがわかる。現時点では未回答だが、そう遠くないうちに回答されるはずで、質問次第でより重要な回答がなされるかもしれない。引き続き注視したい。
※関連資料
昨年、筆者が行った安倍昭恵氏へのインタビュー。
「日本の精神性が世界をリードしていかないと地球が終わる」 安倍昭恵氏インタビュー
先日、本件をAbema NEWS「けやきヒル's NEWS」で取り上げたときの概要
安倍昭恵夫人にインタビューした西田亮介氏"スピリチュアルなものが好きそうな人だと感じた"|Abema TIMES