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2015年7月17日金曜日

安保法制に態度表明する難しさ

安保関連法案が衆院を通知した。衆院の優越にもとづく「60日ルール」もあり、余程のことがない限り、成立が見込まれる。
安保法案が衆院通過- Y!ニュース (2015年7月16日(木)掲載)
今回の問題について、どのような理由に基づき、どのように態度表明すれば良いのか、よく分からずにいる。そんな人は少なくないのではないか。ちなみに意見対立が激化する主題について、多くの人は態度表明せず、「沈黙」する(沈黙後、メディアの論調に影響を受ける。現代日本の場合、どのメディアだろう?)というメディア論の考え方もある。筆者も同様で、勤務先でも、「~反対する学者の会」的なものができたが参加は見合わせた。
「いや、理由はともあれ、戦争への道が用意されている。まずは反対すべきだ」というのがリベラル陣営の見解なのかもしれないし、なんとなくそんな雰囲気もある。そうなのかもしれないが、どうもそういうものに与する気分にもならない。
反対にあたって、「100%とはいかずとも、80%くらい、つまりだいたいはあっている」という論理がほしい。それが見当たらないから、迷うのではないか。なぜ、どのあたりで逡巡しているのか、そのプロセスを述べてみたい。
今回の「解釈改憲」と安保法制は確かに憲法学的には少なからず問題がある。少なくとも、従来までの議論との整合性に課題があるように思える。他方、日本の安全保障態勢は、従来から安全保障環境の変化への「適応」を優先してきたということもまた事実である。かねてから自衛隊、60年安保、周辺事態法等々、「合憲」の「実績」を積み上げてきた歴史的事実もある。同時に、その結果/それでも、それなりに「平和」が維持されてきたという「実績」もある。
つまり、過去を振り返ってみると、安全保障環境の変化への「適応」という命題が、折々の合憲性に「優先」してきたように見える。おそらく、安保法制に賛成の立場をとる「プラグマティック」な立場の人たちはこのような認識に基いているのではないか。
現在の「解釈改憲」の違憲性を声高に主張するという反対派のアプローチについて、大きな疑問が残る。現行の日本の安全保障態勢と実績をどのように評価するのかという点である。
「現行の安全保障の実質的態勢はそれなりに評価/支持するが、今回の安保法制に反対する」という立場を擁護する、強い論理はあまり自明でないのではないか。そして極端な変化を好まないという視点からすると、このような立場がマジョリティではないかと思うのだ。筆者もこのような認識でいる。
そこで冒頭の問いに戻る。このような立場を取るとき、どのような理由に基づいて、今回の安保法制に態度表明すれば良いのかという問いである。
鍵は、実質的な正統性の所在の不明確さにあるのではないか。つまり前述の点を念頭に置いても、安保法制は14年衆院選や13年参院選での中心的公約や争点にはなっていたとはいえないことは疑いえない。直近の衆院選はアベノミクス(消費増税)が争点であり、13年参院選はあまり噛み合わなかったが、原発再稼働賛成/反対が論点だった。
つまり、多くの有権者にとって、選挙で安全保障態勢の大きな変化という重要な問題について、曲がりなりにも説明がなされ、態度表明したという実感がないのではないか。その意味で、与党の強行採決の正統性に強い違和を覚える。
したがって、次の国政選挙(16年参院選、あるいは意外と早くあるかもしれないという衆院選)まで、今回の出来事を忘れないことが何より重要だろう。
ただし、やはり立憲主義と現行の安全保障の両立について、ごく一部の専門家以外は複雑過ぎて、議論するどころかそもそも大雑把にも理解することが難しいという点にも問題があるように思える。政治的に安定したタイミングで、理想と現実を擦り合わせつつ改憲が試みられても良いと考えるが、近い将来に、いつかそのような時期が訪れるのか、ということに思いを馳せるとやや懐疑的にならざるをえない。