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2013年8月5日月曜日

「昭和の超克」と「成熟」の物語――映画『HOMESICK』から

廣原暁監督の新作『HOMESICK』の公開記念イベント(2013年8月4日)として、対談にご指名いただいた。司会は、批評家の渡邉大輔氏が担当した(そのときの様子は下記URLに)。

http://www.cinematopics.com/cinema/c_report/index3.php?number=7466

廣原監督は、現在27歳で、海外のコンペにも積極的に出品し、高い評価を得ている映画界の逸材だ。そして、本作も大変に興味深く拝見させていただいたので、上記URL先のトークイベントでも少し論じた内容を、以下に、もう少し掘り下げてみたい(軽度ネタバレ注意)。

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『HOMESICK』は2つのキーワードが絡み合ってストーリーが進行する。ひとつが「昭和の超克」、もうひとつが「成熟」だ。前者はこの10年の新しい問いで、後者はおよそ創作物において普遍的な問題設定でもある。本作はある意味では、素朴に「貧しかったが、温かく幸せな昭和」をノスタルジックに描く『ALWAYS 三丁目の夕陽』と対をなしている。

本作で描かれるのは、むしろ昭和という「宴の後」と、それをどのように乗り越えるのか、という切実な問いだ。夢のマイホーム、昭和においてはその食卓を温かく囲んだはずの家族、潰れるはずのない仕事。本作では、いずれも自明性を欠く。マイホームは管理物件になって、手元を離れようとしている。家族はバラバラだ。父はペンション経営、妹は世界を旅する放浪家(グローバル人材?)、母はいない。主人公は、突如非正規と正規の中間のような職を失い、「ここ」に留まっている。いずれも現代的な選択肢だが、1人として幸せを確信した登場人物はいない。

絡んでくるのが成熟の問いかけだ。三人の少年たちが、主人公のもとに押しかけてくる。極めて昭和的な方法で。そこには携帯も、PCも、DSも登場しない。一瞬、3人の子どもたちと、主人公が相互依存的に居場所と承認を獲得するかに見えるが、ストーリーは別のあり方を提示する。筆者の理解では、誰も成熟しないし、昭和を超克しない。結局のところ、現代の自明性の基礎には昭和的な関係性や資源が存在し、それを超克することはできず抱えて生きていくしかないという提示のように思えた。本作は時折「サトリ世代」の感性を切り取ったと評されているようだが、世代というよりも私たちが生きる現代の社会構造とその本質を静かに提示する。
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なお、本作の公開を記念して、廣原監督の過去作等もオーディトリウム渋谷で上映するようだ。

http://a-shibuya.jp/archives/7291