先週末「【18歳選挙権:若者X政治参加X主権者教育】「18歳からの選択:18歳選挙権と今後の主権者教育と政治参加&社会参加について」~7月の参議院選挙でのデータ分析を踏まえて~」というちょっと名前の長いイベントに登壇していました。18歳選挙権と主権者教育に関するイベントでした。
ここでのぼくの発言は、下記において、選挙ドットコムさんが端的にまとめてくださっています。友人の某著名選挙コンサルタント氏がキーボードを叩いていたので、スライドもなしに早口で話したぼくの話を実に的確に要約いただきました。ありがとうございました。
ぼくの議論はいろいろなところで書いたり、話したりしているものとほぼ同じだと思いますが、ところで最後の最後に、司会の田幸さんの指名で、某著名選挙コンサルタントこと松田馨さんがおっしゃっていたことが印象的です。松田さんの指摘はまとめると公選法が肥大化、複雑化し過ぎ、裁量の範囲があまりに大きくなりすぎていて、選管の判断も各所で一貫しているとはいえず総合的な見直しが必要だ、というものでした。
確かに公選法どころか、衆参の選挙法時代から付け足しながら現在に至っている公選法はあまりに複雑で実務の専門家を除くとその概要を把握、理解することすら難しくなっています。ぼくもまったくもって松田さんに同意しますし、ぼくもネット選挙解禁のころからその議論に言及していました(たとえば拙著『ネット選挙 解禁がもたらす日本の変容』等参照のこと)。最近の議論でいえば、そもそも18歳選挙権の問題と被選挙権年齢の引き下げ、ネット選挙、供託金問題、政治資金の問題などがすでに各論として別々に論じられていることも、本来の主旨からいえばあまり望ましいあり様とは思えません。総合的な視点が必要です。
むろん現職の政治家からすれば、これまで勝ってきたルール、勝利した経験のあるルールの変更は大変抵抗感のあるものでしょう。だからこそ世論の盛り上がりと選挙のない平時から息の長い議論が必要だともいえます。最近は「選挙以外にも、政治はある」という言い方が流行っていますが、「選挙でしか変えられない政治もある」「選挙が政治参加の象徴的機会である」という原則を思い出すなら、選挙と選挙を規定する公選法がもっとも影響の大きなボトルネックであり、政策変更のセンターピンであることは今も昔もなんら変わっていません。また1950年代、それどころかそれ以前から継ぎ足しつつ使ってきた古いレジームの象徴ともいえます。選挙と公選法の現代的なあり方に関する総合的な議論が必要ではないでしょうか。
(以下、松田さんによる当日のぼくの発言の実況です)
今日はこちらのイベントに参加しています。「18歳からの選択:18歳選挙権と今後の主権者教育と政治参加&社会参加について」~7月の参議院選挙でのデータ分析を踏まえて~ https://t.co/PTYYVikPpz #18歳選挙権— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
イベント始まりました。冒頭、田幸大輔さんより。小中高の学習指導要綱に「主権者教育」という文言が入る。今後も注目される分野である。— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
@Ryosuke_Nishida さんの基調講演。18歳選挙権の解禁、質的な意義はあったと言わざるをえない。歴史的にみると公選法ができてから投票年齢の引き下げは初のケース。— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
定量的な面では課題がある。そもそも240万人。投票率はどうだったか。全体平均よりは低いかもしれないが、20代の過去の投票率とくらべると18歳の投票率は高かった。高校で投票の働きかけを行うことの効果があるのでは。— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
大学の進学率は50%程度、専門学校への進学もある。大学の教育は一斉にコミュニティにたいして働きかけるようにはないっていないし、行動に影響をあたえるのも難しい。高校は生活の場という側面があるので、呼びかけの効果が高いのでは。有権者教育の起点になりうるのではないか。— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
定量的な側面と、実情、内容ですかね。課題が多く残っている。主権者教育の内容、ということです。まだ主権者教育は始まってない。文科省が資料つくって配布をしたが、活用は学校現場に委ねられた。受験に関係ないから活用されていないケースも耳にする。— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
正式な科目になっていないので、各学校の裁量に委ねられた。30万人程度が主権者教育を受けたという文科省のデータがあるが、高校生は300万人程度なので10分の1。内容についても模擬投票などワークショップの時間が多く、知識の点ではどうだったのか。— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
(ここには注釈と訂正が必要でして、ぼくが言及したかったのは総務省の『学校教育と連携した啓発事業実態調査報告書』(リンク先PDF)における選管の出前授業のことです。要は公的機関で、比較的手軽な外部者であり、文科省教材でも言及される選管を用いた出前講義を受けた高校生でさえこの水準に留まっているということでした)
教育と政治の独立の観点からすれば、無色透明な知識を提供するのはわかる。ただ本来、政治というのはどのような政治的価値に共感するのか。自分の価値観を知った上で、判断するものではないか。— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
教育だけでは十分とはいえず、社会全体での課題ではないか。他の世代も社会にでて学ぶ機会がない。政治の知識をどのように学習してもらうのか、思考を助ける学び建てをどこに求めていくのか。— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
定性的には大きな意義があった。主権者教育を受けた若者たちがでてくること。ただ定量的には、受けていない人たちが社会のなかに残り続けていく。ありがちなまとめになるますが、意義はあったが、課題も残されているというところだと思います。— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
@Ryosuke_Nishida 西田さん「18歳選挙権の引き下げが一番の成果で、それが社会のなかで大きくアナウンスされたことが大きかった。投票率で評価するのはどうか。ただ上がればいいのかというとそうでもない。多くの日本の生活者が政治は関係ないと思っているがこれは誤った認知」— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
西田さん「政治家が関係のない領域を探すことの方が難しい。国立大学の学費を規定しているのも、ビジネスに関わる法律も。政治が関係していない領域を探すのが難しい。愛とか友情とか。」— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
秋沢さん「投票率は高いほうがいいんですよね?」西田さん「投票率の上げ下げに一喜一憂しても仕方ないのでは。主権者教育が全ての国民にたいして提供されて、政治を考える道具立てができる。投票は日本においては権利。権利を行使するのは各人に委ねられている。」— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
西田さん「課題は十分な主権者教育・政治教育を受けていないということ。EUを事例にとると、EU市民を育てるという目的があって教育のなかでそれを実現しようとしている。日本にはない、この彼我の差は大きい。」— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
西田さん「自由な教育をつくっていくときに、政治にたいして教育は弱い。教育の現場の自由度を保つためのルールづくりが必要。教育は政治にくらべて脆いものだから。」— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
西田さん「教育現場で、具体的な課題を扱えるようにすること。過去の選挙の具体的なもの。あとは価値の議論。自分の政治的な価値化の自覚とマッチング。二項対立で考えていくのが入り口になるのでは。大きな政府と小さな政府など、暫定的二項対立の図式で考えていくことで自覚ができるのでは。」— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
西田さん「選挙に集約すれば、政党や候補者を選択しなければならない。なので、具体的な事例を扱いつつ、政治的価値を自覚させるような機会や道具を提供していくのが重要だと思います。」— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
西田さん「政治が自分たちの生活に無関係というのは誤った認識であるということを、どう伝えていくのか。日本社会はこれからダウントレンド。この舵取りは難しい。そのネゴシエーションに参加しないことは極めて損をする可能性が高いということを伝えていく。」— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016
西田さん「政治に批判的な眼差しを持てる有権者を育てていくことが教育の役割。政治についての知識と考えるための道具立てを持った生活者を主権者教育だけでなく社会でつくっていく必要があるのではないか。」— 選挙ドットコム (@go2senkyo) September 3, 2016