2013年6月18日火曜日

田原総一朗氏との対談

先日、ある雑誌の企画で田原総一朗氏と拙著『ネット選挙 解禁がもたらす日本社会の変容』(東洋経済新報社)について、対談する機会をいただいた。ネットの動画番組や「朝まで生テレビ!」の収録で大勢でご一緒したことはあったのだが、対談は初めてだった。
田原さんは少し遅れて、手ぶらでやってこられた。颯爽と。

「やあ、今日はよろしく。さっそくはじめようか」
軽く片手を挙げて、そうおっしゃった。

名刺を交換して席に着いた途端、「それで、ネット選挙でなにが変わるの?」

「一般有権者、政党と候補者、マスコミ、ネットメディア、それぞれによって影響の受け方が異なり・・・」

「いや、それで何が変わるの?」

序盤は少し繰り返しこういったやり取りが続いた。さすがにイラッとしたり、脇に汗が滲んだ瞬間もあった。しかし懲りずに丁寧に説明していくとだんだん耳を傾けてくださる時間が長くなっていった。

詳しくは来月に雑誌が発売になったらそちらを読んで欲しいが、まさしく野武士のような方だった。ぼくたちは確かに学会や研究会含め議論を行う機会が多い。しかし、そこではある種の型――たとえば人の話を遮らない、最後まで耳を傾ける――を守ることを無意識に遵守している。

これは癖のようなもので、たとえば「朝まで生テレビ!」ではぼくはまったくカメラを惹きつけることができなかった。

しかし田原さんは違う。対談とはいえ、良くも悪くも、自分のペースで進んでいく。とりわけ唐突な振り方や、大きな二択を迫ることで本音を引き出す等々、いくつかのパターンがあった。それはまさに、テレビ的なものを最大限活かして、幾つもの発言を引き出してきた田原さんの真骨頂なのだろう。

その切れ味はさすがに、鋭く、野武士を思い浮かべた。宮本武蔵のような。少し耳が遠くなられているのかもしれない、とは思ったものの、頭の回転は断然シャープだ。対談では、ひしひしとそれが伝わってきた。

最後に確かに「ネットを使って、政治を変えなければならないね」とおっしゃった。そして、ちらと時計を見て、「じゃ、そろそろこれで。あとはよろしく」と、また片手を挙げて、足取り軽く、おそらく次の仕事に去っていかれた。

テレビの技術特性を、ジャーナリストとして最大限に引き出してきた田原さんが、今なおTwitterやニコニコ動画などでも変わらず、もしくはそれ以上に活躍されていることは本当に凄いことだと思った。

またどこかで田原さんと対峙できる機会があるとよいけれど、と思いながら、その日は過ぎていった(しかし、思いもかけず、また来月、大勢の方々とご一緒することに。また改めて告知します)。