2013年2月5日火曜日

自治体は指定管理や委託事業等における人件費を妥当な水準に引き上げるべき――現役世代はNPOで働けない?

よく知っている、ある自治体から指定管理を受けているNPOが求人を出していた。その条件は以下のとおり。

常勤スタッフ
業務内容
市民活動支援施設フロアー管理業務(来館者対応、電話対応、機材利用補助、配架掲示管理他)相談対応業務(市民活動・ボランティア活動に関する相談)
運営管理業務(会計、人事、各機関との連絡調整、渉外) 
募集人数
若干名
給与
月給135,000円
社会保険・労働保険、年末年始休暇、労働基準法に基づく有給休暇制度あり
交通費実費支給
勤務日数
週4日以上(土、日、祝祭日問わず)勤務 
勤務時間
8時30分から22時までの間で指定する8時間(交代勤務)
※実働8時間、休憩60分

どう思うだろうか。思わず絶句してしまった。しかも、関係者によれば、これでも悪いとはいえず、どちらかといえば好条件の部類に入るようだ。大学業界も、あまり待遇が良いとはいえず、昨今いろいろと問題になっているが、さすがにこの水準の公募がかかることはないだろう。

なぜ、このような条件になってしまうのだろうか。自治体からの指定管理が主たる事業の中心を占めているNPOということもあるが、自治体が人件費の水準をこの程度で設定しているがゆえに、この水準で積算してしまっているのだろう。自治体との関係も深いがゆえに、先読みしすぎてしまっているところもあるのかもしれない。いずれにせよ、この事業を発注している自治体には、この水準で働いてる職員はいないだろう。

いうまでもなく、この水準では年金世代ならともかく現役世代が働くのは厳しい。家族がいればなおさらだろう。民間と同程度とはいわなくとも、近い水準を担保しないことには、いつまで経っても、日本の公共セクターでは若年世代が参入できず、付随して、ITや事業性の現代化も望むことができない。

よくNPOはこれからは自主事業だ、という言葉を聞くが、他国でも(アメリカでさえ)公的支出がNPOの収入に大きな役割を果たしていることが知られている。確かに行政にとってはコストカットの側面も強い、指定管理者制度だが、サービスの質の向上を考えても、人件費を過度に引き下げてしまっては元も子もない。せめて、高い付加価値の創出や質の高いサービスの提供を条件に、人件費を増額できる仕組みが必須だ。「行政の下請け化」の議論から10年が経っても、このままでは困る。協働や指定管理制度における政府、地方自治体側の大きな課題だろう。